俳優としてやりがいがあるという稲役を演じる吉田羊


吉田:まだないです。ただ、セリフの“間”についてメールでダメ出しがきたことがあって、次こそは! と思いましたね。

――三谷さんから、こう演じてほしいという要望は?

吉田:特にありません。むしろ『真田太平記』(NHK)とか、小松姫に関する本や映像作品などは見なくていいです、と言われました。「今回ぼくが作り出す世界は、今までやってきたものとは全く違うものになるでしょうし、羊さんがやれば小松姫になりますから」って。でも、ちょっと調べちゃったんですけどね(笑い)。

――小松姫はどんな人物だと思いますか?

吉田:一見冷たく見えますが、内に芯の強さや熱いものを秘めています。真田家の家族愛に触れて、真田家を守り抜いた良妻賢母として変わっていくので、俳優としてもやりがいがあります。

――藤岡弘、さんのお父様ぶりは?

吉田:芝居以外のところでも、「おはようさん」って声をかけてくださって、24時間私の父でいてくださるんだなと愛情を感じます。俳優・藤岡弘、さんとしても、父・本多忠勝としても、現場にいらっしゃるだけで安心感があります。

 藤岡さんが孫を抱っこするシーンを撮ったのですが、台本上に「忠勝の顔を見た瞬間、火がついたように泣く」と書いてあって、そううまくいかないよねと思ったんです。だけど子供が藤岡さんを見た瞬間、うわあと泣きだして、なんとリアルな芝居かと(笑い)。持ってらっしゃいますね。

――稲は薙刀を使っていますが、藤岡さんからアドバイスはあった?

吉田:薙刀の先は本物の刀なので、すごく重たいんです。振り回すと重たい方向に体が引っ張られて重心がぶれるので、「丹田に力を入れて腰を低くするんです」と、専門的なことをアドバイスしていただきました。

――堺雅人さんの印象は?

吉田:堺さんには殆ど会わないんです。ずっと堺さんとは共演したいと思っていたので、一ファンとして見ちゃっているところがありますね。実は、『篤姫』(NHK)で堺さんが演じた徳川家定公が大好きで、携帯の待ち受けにしていたことがあるんです。電車の中で待ち受けを高校生に見られて、笑われるという経験があります(笑い)。

――夫・信幸役の大泉洋さんは、いかがですか?

吉田:大泉さんとは、すごく波長が合います。それはお芝居でも雑談でもそうですけど、打てば響く人なんです。こっちがそう返してほしかったというツッコミを確実にしてくれるのは、とても気持ちがいいですね(笑い)。

 最初の頃、徳川家康を前に、2人で顔を見せるシーンがあったんです。各々が名前を名乗って同時に顔を見るという演出だったんですけど、2人でカウントを相談したわけじゃないのに、同じタイミングでピタッと顔が上がったことがあって、その時はすごく嬉しかったです。この人となら夫婦になれるというか(笑い)。

 顔を上げた時の大泉さんの顔がハンサムに見えてしまって、小松姫は信幸と目が合った瞬間に「この人、素敵」って思ったのかなって考えた瞬間でした。それ以降も小松姫が冷たく見えるのは、ツンデレのツンですね(笑い)。

――大泉さんはコミカルな部分を封印されていますね。

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