国内

築地市場の豊洲移転 費用2000万で40の仲卸が廃業説

築地の移転で引っ越し費用が1店1000万~2000万とも

 石原慎太郎東京都知事から計画が進んでいた築地市場移転。しかし、この度、小池百合子都知事が築地市場移転を延期することを正式に発表した。ここで改めて築地市場の歴史を振り返ってみよう。

 築地の前身は徳川家康の江戸時代、日本橋に作られた魚河岸だ。当初から日本の食の流通を担い、300年間続いた日本橋魚河岸は、1923年の関東大震災で焼失したため、築地の海軍省所有地を借り受けて、臨時の東京市設魚市場が開設された。これが築地市場の始まりである。

『築地の記憶』(旬報社)の著者で築地市場に勤めた歴史ライターの冨岡一成さんが解説する。

「魚問屋が作った私設市場だった日本橋魚河岸とは違い、築地は東京都が開設する公設市場です。卸売市場法という法律のもと、生鮮品の安定供給と公正で公平な取引を目的に開かれる市場です」

 公正で公平な取引のために行われるようになったのが、築地名物の「セリ取引」だ。

「昔の築地市場はセリが命で、ほぼすべての生産物はセリで価格が決まっていましたが、現在ではマグロやエビ、一部の生鮮品に限定されています。

 セリ取引では卸が売手となり、全国から集荷された生産物をなるべく高く売ることで生産者の利益を守る一方、仲卸は消費者の立場になってなるべく安く買いつけようとする。そのせめぎ合いで価格が決まる公平なシステムです」(冨岡さん)

 築地のブランドと評価を支えてきたのは卸業者と仲卸業者だ。卸業者は築地に7社あり、日本全国のみならず、全世界から魚を集めてくる集荷機能を担っている。

 一方の仲卸業者は、卸業者との間でセリなどにより値決めを行う評価機能、小売業者向けに小分けにして売る分荷機能を担うが、とりわけ仲卸業者の評価は「目利き」、すなわち魚の状態を見極める重要な役割を演じる。

「マグロは人気が高く、値段も高いけど、実は魚を割ってみるまで本当の品質はわかりづらい。実際に割ってみたら“何だこれは”なんてことも結構あります。中身が見えない魚に値段をつけるマグロセリはギャンブルのようなものです。仲卸は見た目、肉質、手触り、においなど五感をフルに働かせて、慎重にマグロを見極めますが、最終的にはリスクを背負った商いとなります」(冨岡さん)

 築地の強みはこの目利きの業者がそろっていることだ。「大物」と呼ばれる、マグロの仲卸業者だけでも生や冷凍専門などに分かれ、その数は約200社にのぼる。

 マグロといえば青森県大間町が産地として有名だが、仲卸業者は産地のブランドイメージにとらわれず、自分の感覚を信じて魚の価値を判別する。このため、一般的には知名度の低い沖縄産のマグロが最高値を付けることもある。

 そんなプロ集団の仲卸業者に腕利きの料理人も厚い信頼を寄せる。築地は銀座にほど近く、銀座の鮨店や日本料理店、天ぷら店など日本を代表する店の料理人が足繁く市場に通う。

関連記事

トピックス

オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト