国内

「貧困女子高生」がNHKの取材に応じた経緯

「史上最も暑い夏」といわれた猛暑にもかかわらず、エアコンのついていない家の中、保冷剤を首に当てて暑さに耐える女子高生。家にパソコンがなく、パソコンの授業についていけなくなり、それでも「なんとかしたい」と1000円のキーボードだけ母親が購入。ブラインドタッチの練習をする。将来は進学を希望していたが、母子家庭のため経済的な壁に直面している、とつらそうな表情で話す──。

 これは8月18日に放映されたNHK『ニュース7』の「子供の貧困」をテーマにした特集だ。高校生や現役教師を前に、講演会で貧困の実情を訴えた女子高生A子さん(17才)の生活に密着していた。

 経済大国と呼ばれる日本で、年々深刻化する「相対的貧困」。子供の相対的貧困率は16.3%。6人に1人が貧困であり、シングルマザーの子供はさらに進学率が下がってしまうという厳しい現実を映し出した内容だった。

 こうした報道の場合、偏見や差別にさらされることから、当事者は匿名で行われるケースがほとんど。そんななかA子さんは、名前どころか、顔も公開した。その上、住んでいる家の様子まで公開し、貧困の現状を訴えたのだ。

 それゆえに、反響も大きかった。しかしその内容はA子さんやNHKが意図しているものとは真逆の方向へと進んでいった。

 放送直後から猛批判が始まった。ほんの数分映ったA子さんの自宅の様子から「アニメグッズが部屋にたくさんある」「エアコンのようなものが映っている」「2万円相当の高価なペンセットがあった」などと“アラ探し”が始まった。A子さんのSNSはあっという間に突き止められ、過去のツイートから「ランチに1000円も使っている」「大好きなバンドのコンサートに行っている」などと、生活困窮を疑う声がインターネット上にあふれ大炎上。ついには彼女の住んでいる住所まで特定されてしまった。

 これにさらなる油を注いだのが片山さつき参議院議員(57才)。ツイッター上で批判ともとれる意見を展開し、「NHKに説明を求める」とまで発言。そして、NHKの報道がやらせだったのではないか、という声が一部メディアで飛び出した。

 このような事態にA子さんは、「住所を特定されてしまったことがものすごく怖い。誰かが家にまで来てしまってもおかしくない状況になってしまった」とショックを受けているという。

 さらにこの件は、『東京新聞』や『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)などでも大々的に取り上げられている。内容は彼女を擁護するものだが、それすらインターネットでは揶揄の対象になった。

◆彼女は恵まれているのではないか? との意見が県庁にも

 そもそもA子さんが同番組に出演するきっかけになったのは、8月18日に、神奈川県主催のイベント『かながわ子どもの貧困フォーラム&ワークショップ』で登壇してスピーチをしたことだった。このイベントは神奈川県の高校生と専門家、職員たちを中心にした『かながわ子どもの貧困対策会議』で企画・運営していたもので、A子さんはそのメンバーの1人だったのだ。

「貧困を伝えるのはつらいけれど、相対的貧困を知ってもらうために勇気を出して自分の思いや現状を伝えたい」とスピーチを決意したという。“神奈川県子ども家庭課”の課長、小島厚さんが説明する。

関連記事

トピックス

不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
国民民主党から参院選比例代表に立候補することに関して記者会見する山尾志桜里元衆院議員。自身の疑惑などについても釈明した(時事通信フォト)
《国民民主党の支持率急落》山尾志桜里氏の公認取り消し騒動で露呈した玉木雄一郎代表の「キョロ充」ぷり 公認候補には「汚物まみれの4人衆」との酷評も出る
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン