今年も残すところあとわずか。年末年始に神社を訪れる人も多いだろうが、知っていそうで知らないのが「参拝の作法」だ。ベストセラー『神社の謎』著者の合田道人氏が伝授する。
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空前の神社ブームである。伊勢神宮と出雲大社の式年遷宮が60年振りに重なった2013年には、両社合わせた参拝者の数は2220万人にも上った。
私自身、コンサートや講演で訪れる土地の神社にまめに足を運ぶようにしていたら、ここ4、5年は年間のべ200ほどの神社に参拝していた。だが、意外に参拝の作法を知らない人が多い。
たとえば、拝殿の手前にあり、手を洗い、口をすすぐための手水舎。神様と対面する前にここで身を清めなければならないのだが、そもそも素通りしてしまう人も少なくない。
立ち寄る人もやり方はさまざまで、あるとき見ていると、中年の男性が柄杓ですくった水盤の水を飲み干し、次にやってきた年配の女性は水盤の中に手を入れて洗っていた。それでは身を清めたことにならないばかりか、俗世の穢れをまき散らしていることになる。
実は鳥居をくぐるときにも、どちらの足から踏み出すべきかが決まっているのだが、ご存知だろうか。
若い人の間ではパワースポットが流行っていて、意外に参拝の作法に詳しい人が多い。逆に無知なのは、神道的なものを否定する戦後教育を受けてきた今の中高年男性である。
古の時代より積み重ねられてきた作法は単なる形式ではなく、その一つひとつに意味や理由がある。それを知り、守ることで意識が高まり、神様をより身近に感じ、心が豊かになる。
●ごうだ・みちと/1961年北海道生まれ。歌手、作家。年間のべ200ほどの神社を参拝している。著書の『神社の謎』シリーズ(祥伝社)が累計10万部超のベストセラーになっている。12月24日に『あなたの願いをかなえてくれる神社』(同)が発売。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2016年12月23日号