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部下を追い詰める「クラッシャー上司」との恐怖問答を実体験

「クラッシャー上司」の恐怖(写真:アフロ)

 部下を精神的に追い詰めて最後には潰してしまう「クラッシャー上司」の存在が問題になっている。精神科産業医に取材したコラムニストのオバタカズユキ氏がその「手口」を再現する。

 * * *
 一斉報道によると、〈厚生労働省神奈川労働局は11日、労使協定の上限を超える残業を社員にさせたとして、労働基準法違反の疑いで法人としての三菱電機と、同社の幹部を書類送検した〉(日本経済新聞電子版)。

 昨年末には、電通が同法違反容疑で書類送検されたばかり。こんどは旧財閥系グループの「組織の三菱」だ。日本を代表する企業の雇用問題が、次々と可視化されている。

 電通は若手女性社員の自殺から1年後にやっと当局が介入したわけだが、今回の件は、元社員だった31歳の男性が過重労働による精神疾患を発症、労災認定を受けたことで捜査が始まった。労災認定まで踏ん張った男性の功績を讃えたい。同様に苦しんでいるたくさんの人々の解放の道を開くきっかけになりえるからだ。

 三菱電機の元社員は、実際の残業時間が最大月160時間にも上っていたという。平成13年に厚生労働省労働基準局長が通達した「心的負荷による精神障害の認定基準」では、〈発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の時間外労働を行った〉場合を「極度の長時間労働」としており、まさにそれに相当する過酷な働かせぶりだったわけだ。

 電通の場合も三菱電機の場合も、当局が問題としたのは「残業時間の量」。そこには一定の規制が必要だ。しかし、そこだけでこの話が終わってしまっては表面的すぎる。人はどんなに働いても元気にやっていける場合もある。逆に、残業時間が数十時間でも潰れることがある。

 ざっくりとした言い方だが、人はその意義を納得した上での労働ならば相当過酷な内容でも踏ん張ることができる。逆に、理不尽な労働が続くと、簡単にポッキリ折れる。

 産経ニュースによると、三菱電機の男性は、上司からの厳しい叱責を受けていた。〈「お前の研究者生命を終わらせるのは簡単だ」「言われたことしかできないのか。じゃあ、おまえは俺が死ねと言ったら死ぬのか」〉とやられていたという。

 これはどう考えても理不尽極まりないパワハラである。恐喝に近い。長時間問題のみならず、職場の暴力を、もっともっと報じてほしい。

 ただ、パワハラは刑法上でも民法上でも良い意味で問題になりやすくなってきたので、以前ほど露骨にやる上司は減っている。最近は、もっと狡猾なモラハラが増えている。

 その実態はどんなものか。発売されたばかりの『クラッシャー上司 』(PHP新書)が詳しく紹介している。この本は私が企画・構成役で、〈部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人〉である「クラッシャー上司」について、精神科産業医の著者・松崎一葉氏から長時間話を伺い、議論を重ね、まとめさせてもらった。

 この世で初めて「クラッシャー上司」の実態と精神構造と問題解決法を明らかにした一冊なのだが、その中に詰めこめなかった素材がある。それをココで紹介したい。

 モラハラの怖さがリアルに伝わる、筆者と著者のやりとりだ。

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