高橋一生が演じる「家森」さんのキャラも話題に


 土井演出の特徴は、描き方の多彩さと親近感。ここまで『カルテット』では、同じ演出の金子文紀さん、坪井敏雄さんとともに、2話で「気が合う男女でも恋に落ちるとは限らない」司(松田龍平)と同僚・結衣(菊池亜希子)の友人関係、3話で「年月を経ても修復できない」すずめ(満島ひかり)と欧太郎(高橋源一郎)の親子関係、4話で「子どもがいるのにやり直せない」諭高(高橋一生)と茶馬子(高橋メアリージュン)の元夫婦関係、6話で「それぞれ家族と恋を求めてすれ違う」真紀(松たか子)と幹生(宮藤官九郎)の夫婦関係を描き分けてきました。

 カメラワークやカット割りで微妙な距離感を表現し、セリフや動作に緩急をつけて視聴者をグッと引き込むなど、随所に繊細な仕事ぶりが見られます。だから登場人物の一人一人に血が通い、視聴者は「単なるドラマの1シーンを超えて、親しみのある人物を見ている」感覚を覚えるのでしょう。

 また、それらを1話約45分(CM除く)のパッケージとして、きっちりまとめられるのも土井さんの強み。司と結衣の「一夜の過ち」も、すずめ親子の長い年月も、同じ1話として並列させながらまったく違和感がないのは、さすがとしか言えません。

◆リスクを恐れないディテールのこだわり

 もともと土井さんが手がける作品は、『青い鳥』『GOOD RUCK!!』などで見せた「スケールの大きな映像美」という特徴がありました。『カルテット』でも、美しい楽器の音色とともに軽井沢の美しい自然が見られますが、近年の土井演出はそれだけではありません。

 ここ数年の作品で目立つのは、ディテールのこだわり。昨秋放送された『逃げるは恥だが役に立つ』で土井さんが手がけた3・4話は、『大改造!!劇的ビフォーアフター』『私をスキーに連れてって』『アルプスの少女ハイジ』『サザエさん』『2355』『新世紀エヴァンゲリオン』などのパロディを連発。ナレーション、テロップ、音楽、役名の細部まで作り込む徹底ぶりは他2人の演出を上回り、みくり(新垣結衣)のチアガール姿も話題になりました。パロディ路線を強く印象づけ、右肩上がりの人気を生み出したきっかけと言っていいでしょう。

 また、『重版出来!』では、劇中の漫画をゆうきまさみさんや藤子不二雄Aさんなどの人気漫画家に描いてもらった上でフル活用していましたし、『コウノドリ』では、生まれたばかりの小さな赤ちゃんや低体重児をリアルに映すなど、リスクを恐れずにディテールを追求していました。

 パロディもシリアスも手間をかけて全力投球。「このシーンはこれくらいでいいかな」と視聴者を侮ることなく作り込むため、土井さんの作品は「1話を2回見る」「重要なシーンは巻き戻して確認する」熱心なファンが少なくありません。結果として土井さんの作品は、ドラマフリークをうらなせるだけでなく、ライト層によるSNSの書き込みも誘発しているのです。

◆俳優や視聴者への変わらぬ信頼

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