その岩瀬アナもそうだったが、女子アナの異動先の多くは「広報部」や「宣伝部」。マスコミやタレントとの交流もある華やかな部署だし、アナウンサーでなくなっても、“司会”を任されることもある部署とも言える。
が、「なぜ私が?」「こんなことを?」と落胆する女子アナは多いのである。ちなみに、私が知る限り、宣伝部に異動してからも実に楽しそうに仕事をしていたのは、テレビ朝日の川北桃子“元”アナだけだ。
その他の女子アナは、「辞めて、どうするの?」と言いたくなるようなタイプであっても、他部署への異動を機にフリーを選ぶ者が多いのだ。
いいか悪いかは置いといて、元・日本テレビの脊山麻理子アナのように“グラビア界”に進出したり、同・宮崎宣子アナや馬場典子アナのように“自虐ネタ”がウケ、バラエティー番組からオファーされたりするタイプもいる。先のことはわからないし、決断したことで広がる可能性もあるにはある。やっぱり女子アナはみなたくましい。
武田祐子アナに話を戻そう。
“声”で勝負し、“声”がウケ、他部署への異動話からも免れ、「定年説」も鮮やかにクリアしてきた武田アナ。だが、NHKやTBSとは異なり、ラジオとの兼営局ではないフジテレビにあって、アラフィフ女子アナの“居場所”はそう広くはなかったと思われる。
近年、武田アナは『直撃LIVE グッディ!』の“フィールドキャスター”を担当していた。何度か彼女の姿を見かけたのは“芸能”の現場で、ベテラン芸能リポーターらと席を並べている武田アナの姿に、私は違和感をおぼえたものである。
当初、番組知名度の低さから、『グッディ!』のフィールドキャスターの面々は番組名を連呼したり、場の空気を読まない質問をすることで他局スタッフから不評だ。『グッディ!』スタッフは武田アナにも、そのようなリクエストをしていたと思われる。つまり、かつての“サンジャポ・ジャーナリスト”のんちゃんこと小林のんのような役割と言ったらいいだろうか。武田アナの年齢やキャリアにはそぐわない内容だったのである。
局アナだから、もちろん、それも“仕事”の一つなのだけれど、見ていて気の毒に感じることが私にはあった。
退社にあたり、スポーツ紙の取材に応じた武田アナは「家族も増え、これまでとは違った時間の使い方があるのではないかと試行錯誤した結果の決断」とコメントしている。武田アナの夫はフジテレビ局員だ。制作や編成など、いわゆる“現場”には欠かせない存在で、私も仕事をしたことがあるが、地に足のついた堅実なタイプ。だが、会議中、ジョークも飛ばせば、トレンドには誰よりも前のめりになるテレビマンらしい一面もある男性で、武田アナとは「本当にお似合い」と羨む女性スタッフや後輩女子アナは多い。
入社が94年で結婚は02年。第一子出産は11年。そして退社が17年。武田アナの“転機”はいつもゆっくり訪れ、その都度、じっくり考えて行動に移してきたようにみえる。セント・フォースやフォニックスといった事務所には所属せず、文字通りのフリーアナとして、『全力!脱力タイムス』や『ザ、ノンフィクション』のナレーションは引き続き担当するという。これも、アナウンサーのままフジテレビに居られたからに他ならない。
武田祐子アナは、フリー女子アナの“新しいカタチ”を示してくれた。