早期に暴行騒動の幕引きを図りたい相撲協会と“利害が一致”したのが白鵬だった。スポーツ紙のベテラン相撲担当記者が言う。
「2011年に発覚した八百長問題で解散寸前まで追い込まれた相撲協会としては、これ以上傷口が広がる前に事態を収拾させる必要があった。それに現執行部としては、騒動を終わらせることで、改革派である貴乃花親方の動きも封じられます。
そのためのキーマンは、絶対的に強い力士であり、角界に幅広く存在するモンゴル人力士のまとめ役でもあり、さらには暴行現場にもいた白鵬でした。早期の幕引きのために引退した日馬富士が、白鵬へ相談しなかったわけがありません。これで八角理事長ら相撲協会執行部は、白鵬に“借り”を作ったのです」
白鵬としては相撲協会に“貸し”を作っておいて損はない。なぜなら、彼には野望があるからだ。
「大相撲で親方になるためには日本国籍が必要ですが、モンゴル人初の五輪メダリストという“モンゴルの英雄”を父に持つ白鵬は昔から『モンゴル国籍を持ったまま親方になること』を目指してきました。協会上層部は白鵬にだけ特例を認めることをずっと否定してきましたが、今回の件で何らかの“手打ち”があるかもしれません」(相撲ジャーナリスト)
多くの内弟子を抱える白鵬は、帰化するにせよ、しないにせよ、いずれは親方になるはずだ。
「出身母体である名門・宮城野部屋を継承して『白鵬部屋』を興すつもりでしょう」(前出・相撲ジャーナリスト)
その先に見据えるのは「モンゴル一門の立ち上げ」だ。一門とは簡単にいえば、「派閥」のようなもので、力士は連合稽古から冠婚葬祭まで、土俵の上だけでなく生活のすべてで運命共同体になる。
「モンゴル一門とはモンゴル出身の親方衆の集まり。今は帰化した旭天鵬(友綱親方)や朝赤龍(錦島親方)の2人ですがいずれは帰化するモンゴル人力士が続出してモンゴル一門は超強力な一派になるでしょう。そのためにはモンゴル互助会を毛嫌いする貴乃花親方の動きを封じる必要もある。また、モンゴル一門と組むことは、現執行部の存続にも繋がります。つまり、“貴乃花の消去”で協会と白鵬の思惑が一致したのです」(前出・担当記者)
◆貴乃花親方は「共謀」を疑っている