中華会館内にて、左から洪門会員、筆者、ヒルバート、カナダ華僑退役軍人会長で孫文を背景に記念撮影

 ヒルバートが所属する洪門は、清朝中期の中国南部で生まれた伝統的な秘密結社だ。別名は「チャイニーズ・フリーメイソン」(*1)。天地会や洪幇(ホンハン)などの名でも知られる。

(*1:彼らは「フリーメイソン」を「秘密結社」の意味で使っていると思われる。本家「フリーメイソン」との思想上の関係はない)

 かつて「反清復明(はんしんふくみん)」(清朝の打倒)を掲げ、太平天国の乱や1911年の辛亥革命にも協力した。「中国革命の父」 の孫文も、アメリカの洪門の幹部だった。バンクーバー支部は、革命前の孫文を一時匿ったことすらある。

 そんな歴史が示す通り、中華民族主義の強い組織だ。

「中華会館はバンクーバーの僑胞(華人同胞)たち全体の組織だ。洪門はその主要な構成組織として、華人コミュニティの団結や友好のため活動している」

 関係者いわく会員数は500~2000人というが、チャイナタウンの伝統的な僑胞団体への影響力は強い。彼らは19世紀なかばからカナダの華人社会に進出し、現在は「洪門民治党」の名で中華会館の隣のビルに全国本部を置く。バンクーバーのほか、オタワ、トロント、モントリオールなど各地に20あまりの支部がある。ほか、香港やマカオをはじめ全世界の華人社会に兄弟分の組織が広がる。

 中国本土でも共産党に協力的な一派が「中国致公党」の名で存続を許され、対華僑の統一戦線工作を担う。特にカナダの洪門は致公党中国領事館との関係が深く、北京との距離が近い。それはヒルバートの言動からも明らかだった。

「習近平政権は偉大だ。中国史上で最も素晴らしい政権だと考えている。われわれはカナダ国民だが、祖籍の地である中国を深く愛している」

 そう言って手元のアルバムをめくる。過去に中華会館の名義で実施した、カナダ華人たちの「愛祖籍国」活動の写真が並んでいた。

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