市原さんが最期まで女優であった理由──。多くの知人が口を揃えるのが、「夫の哲さんが“女優をしている時がいちばん輝いているよ”と昔から言っていたから」だという。
1961年、俳優座養成所時代の同期で、その後演出家の道に進んだ2才年上の塩見哲さん(享年80)と結婚した。
「哲さんとは“役者仲間みたいな関係”とおっしゃっていましたが、おしどり夫婦として有名でした。お子さんも望まれていましたが、20代、30代と、2度にわたって流産を経験され、結局、子宝には恵まれませんでした。医者に“子供ができにくい体”と言われた時は、悲しくて涙にくれたそうです。でも、それからは夫婦ふたりで支え合ってこられました」(舞台関係者)
2014年、最愛の夫・塩見さんが他界。後のインタビューで市原さんは、当時のことをこう述懐した。
《私の人生もこれで終わったような気がして。すぐあとから行きますねって呼びかけました》
最期まで女優として生き抜いた市原さん。今頃は、塩見さんや樹木さんに再会し、あの穏やかな美しい声で、語り合っているだろう。
※女性セブン2019年1月31日号