国際情報

日本の真髄を伝えた川端康成 実はタフネゴシエーターだった

 SAPIOが識者50人にアンケートした「日本のタフネゴシエーターは誰か」で文芸評論家の富岡幸一郎氏はノーベル文学賞作家、川端康成の名をあげた。ノーベル文学賞授賞式の名スピーチこそタフネゴシエーターに値すると指摘する。
 * * *

 川端康成をタフネゴシエーターと呼ぶのには違和感があろう。しかし、日本史上ということであれば、あえてこの作家の名前を挙げたくなる。

 昭和43年12月、ストックホルムでのノーベル賞授賞式において、羽織・袴姿のその白髪痩躯(はくはつそうく)の川端は、まさに他の受賞者を圧して異彩を放っていた。その胸に日本国の文化勲章を帯していたことも忘れてはならない。

 つまり、川端はひとり日本文学を代表してではなく、文字通り日本文化を、そして日本という国を代表して世界の晴れ舞台に立ったのである。

 さらに受賞記念の講演「美しい日本の私」は、明恵、良寛、道元、一休らの歌を紹介しつつ、禅と自然と三十一文字(みそひともじ)の言葉を通して「日本の真髄」を伝える、驚くほど深く豊かな、そして平易な内容であった。それは川端の文学を直接に読んでいない西洋人にも、強烈な印象を与えた。

 外交が言葉による交渉であるとすれば、まずお互いの立場と対立点を明確に述べる必要がある。川端はこの講演の最後で、日本あるいは東洋の「無」と、西洋流の虚無(ニヒリズム)とを比較し、その「心の根本がちがう」ことを見事に語っているのだ。みずからの国柄をこれほど簡潔かつ正確に世界に向かって発信した例はないだろう。

 日本文化の本流たる「手弱女(たおやめ)」ぶりは、単なる軟弱さや優しさや友愛とは似て非なる、この国の長い歴史と伝統によって育まれた、強い妥協なき精神であることがよくわかる。

 この一点でも、川端の講演は、日本に大きな国益をもたらし続けているといってよい。

※SAPIO2011年1月6日号

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン