国内

消えた年金問題 年金役人たちは「不始末の隠蔽」に才覚発揮

 本誌が前号で報じた「『消えた年金』がまた消えた」(※記事下【注】参照)に、国民の怒りが爆発した。「私の申請がほったらかしにされていた理由がわかりました。私たちの年金を奪っておきながら、お役所の都合で確認をサボるなんて許せません」――編集部に電話してきた70代女性はそう声を震わせた。しかし、国民のカネをくすねてきた年金官僚たちは、悪事が発覚しても“蛙の面に小便”だ。というのも、「政治家も大マスコミも俺たちを追及しない」と高をくくっているからだ。

 本誌前号でスクープした「脱退手当金申請ボイコット」問題のあらましは記事下にまとめたが、年金役人たちは不始末を起こすことと同じくらい、「不始末の隠蔽」に才覚を発揮する。その後の顛末を知る総務官僚が暴露した。

「『ポスト』発売前日の1月13日に総務省と厚労省の担当者で協議が持たれ、他媒体の後追い取材を想定した対応マニュアルが作成されました。ポストが書いた『転送拒否』は否定し、『調整』に時間を要した―という見解で統一することが決まり、両省の担当政務官に報告された」
 
 厚労省の中堅幹部はこう証言する。

「12日に、厚労省が調査の人員と予算を出すという合意が両省間で交わされ、総務省は翌日から転送を受け入れた。マスコミや申請者からの問い合わせに、『手続きはすでに始まっている』と答えるためです」
 
 4か月以上も放置されていた“懸案”は、わずか1日で解決したのだ。この問題が役所の論理で引き起こされたことを自ら認めているようなものである。
 
 15日朝刊で報じた朝日は、もはや役所の広報紙である。国民を敵に回すその姿勢は看過できない。

〈厚生労働省と総務省の調整が手間取り、審査事務が4か月間滞った〉
〈(総務省は)厚労省と調整し、今月12日に合意した。これで、第三者委による審査がようやく始められることになった〉と、役人の筋書き通りの記事なのだ。ついでにいえば、厚労・総務両省が「支給漏れの可能性が極めて高いのは8000人」と認めているのに、なぜか記事では「最大4000人」と手加減されていた。
 
 興味深いのはこの問題を無視した読売だ。実は、転送を拒否した第三者委の委員には、同紙の本社編集委員が名を連ねている。審議会などにマスコミ幹部を招き入れて懐柔するのは官僚の常套手段だ。

【注】本誌1月28日号『「消えた年金」がまた消えた、という呆れた話』の概要
 年金事務所(厚労省所管)で確認できない記録は年金記録確認第三者委員会(総務省所管)に転送される。昨年9月、厚労省は「脱退手当金の支給漏れ」の疑いのある約14万人に通知を送ったが、これに基づく申請は年金事務所から第三者委に転送されなかった。確認のための人員と予算は厚労省が出すべきと主張した総務省が、転送を拒否したことが理由。国民不在の省益争いが原因で、申請は4か月以上も放置された。

※週刊ポスト2011年2月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン