国際情報

拘束された写真家「中東ドミノはフェイスブックとかみ合った」

吊されたムバラク人形

 エジプト・カイロでの民主化デモを取材していた日本人写真家、Q.サカマキ氏は、その最中、軍刑務所に3日間拘束された。サカマキ氏が身をもって体験した革命の背景を解説する。

 * * *
 巨大な民主化の波を生み出した大きな要因は幾つかある。

 まず、「ムバラク政権の圧政」だ。取材した大半の人間がトップに理由をもってきていた。彼らは、さらに圧政について分類し、その中でもっとも多かったものは、日常の安全性だった。ポリスに嫌われれば、要求された賄賂を断われば、理由などなく多くの者が逮捕され、拷問されていた。
 
 また、賄賂に加えて、縁故主義もはびこり、それらがなければまともな仕事を得ることができなかった。こうした悪政が、階級社会を生み出し、実質20%以上とも言われる失業率、あるいは、国民の40%が1日2ドル以下の収入、という状況を生み出していたのだった。
 
「殉教者シンドローム」の要因もある。圧政に対し、それを変えることを大義とし、その大義が自分だけでなく、大きなグループや民族的域に達するとき、死さえいとわずに達成しようとするものだ。もともとイスラム/アラブ文化にはこの価値観はより多く存在し、それが今回爆発したものだった。

「フェイスブック」という時代の申し子もうまくかみ合った。このテクノロジーの進歩がなければ、いかに圧政が中東全域に広がっていようと、殉教者シンドロームが存在しようと、カダフィーの息子が比喩したように、短期間でこれほどの巨大なムーブメントにはならなかったはずだ。事実、そのため、過去何十年と中東の圧政者たちは自らの権力を保ち続けることができた。
 
※SAPIO2011年3月30日号

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン