国内

生徒7割亡くなった大川小学校教頭の後輩 叩きに苦悩訴える

 3.11東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手・宮城・福島の3県。そこで暮らしてきた人たちはもとより、彼の地を故郷にもつ人々の心の傷もまだまだ癒えることはない。宮城県石巻市出身のコラムニスト・木村和久さんが、縁のある人々の安否確認など、震災当時の状況をひとつひとつ掘り起こしていく。

 * * *
 私の故郷、石巻は大震災で壊滅的な被害を受けました。震災当日は、親戚の安否確認ができないことにいら立ち、悶々と眠れぬ夜を過ごしました。連絡網は一切途絶え、押し寄せる津波のニュース映像に、ただ恐れおののくばかりだったのです。

 なによりいちばん心配だったのは、実家に住む大正生まれの叔母夫婦でした。足腰も弱っているうえ、近辺で津波が2階まで押し寄せたニュースを聞き、正直ダメかと諦めかけていました。眠れない日々が続きます。

 地元にいる兄と数日後に連絡がつき、近くなんだから叔母の家を見てこいと大喧嘩にもなりました。しかし、実際のところ、兄も被災者。しかもガソリン不足で身動きが取れないのです。

 ようやく5日後、私がインターネットで捜索を出していたのを手がかりに叔母の孫から連絡が来て、無事が確認できました。そのときは陳腐な表現ですが、涙がとめどなく溢れて止まりませんでした。恥ずかしい話、この年まで“涙がとめどなく溢れる”といった経験はなく、それは映画とか小説の世界での表現だと思っておりました。ところが今回の大震災で、私自身、涙が止まらなくなったことが3回もありました。

 最初は叔母の無事を確認したこのときでした。2回目は震災数日後、新聞で亡くなったかたの名簿を目にしたときです。東京の新聞を読んでいるのに、1面全部が地元のかたの名前ばかりです。青森県、岩手県と読み進み、宮城県の部分がやたら大きく紙面の8割を占めます。その大きなスペースを詳細に見ていくと、石巻市、石巻市、石巻市…と、延々地元のかたばかりです。やや新聞から目を離し、石巻市が紙面のほとんどを占めていると気づいたとき、愕然としました。なんで私の故郷ばかりなんだ! 同時にとめどなく涙が溢れてきて、その涙をぬぐいながら、親戚や同級生の名はないか、必死に探しました。

 そして3回目に涙したのは、生徒の7割が流された大川小学校の悲劇です。亡くなった子供の頬についた泥が取れないといって、母親が手でなく舐めて取ってあげたと報道されていました。こうして書いている段階でも、また泣けてきます。

 しかも、大川小学校では先生の多くも亡くなっています。震災当日、校長不在ゆえ、教頭先生が指揮を執りました。実はその教頭は私の高校の先輩で、尊敬する人です。しかし避難誘導に間違いがあったのか、多くのかたが亡くなりました。あえてそれを口にはしないものの、残された家族にはいまでもやり場のない怒り、悲しみが充満しています。その教頭先生本人も、亡くなっているのに、死してなお責められるそのつらさ…です。

※女性セブン2011年6月23日号

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン