国際情報

フランスの外人部隊 フォアグラ食べラム酒携帯ボトル持ち歩く

 紛争当事国の国民ではないのに、金銭で雇われ、戦場に繰り出す傭兵たち。祖国を離れて戦う彼ら傭兵たちの日常はどんなものか。ジャーナリストの宮下洋一が解説する。

 * * *
 傭兵はあちこちの国にいるが、そのすべてが独裁者や王族に雇われているというわけではない。たとえば、カダフィが参考にしたフランスの外人部隊は、世界の屈強な男たちが集まった精鋭部隊として知られている。

 今はフランス陸軍の傘下にある正規軍で、厳密には傭兵とは言えないが、古くはクリミア戦争、スーダン遠征、第1次世界大戦、最近では湾岸戦争からコソボやコートジボワールやアフガニスタンなどで活動を繰り広げてきた。

 隊員数は7768人で、世界146か国の外国人から構成されている(2010年現在)。8連隊、1准旅団、1分遣隊からなり、人種・言語・宗教を問わず、やる気のある者なら誰でも入隊できる。
 
 2005年5月、民間軍事会社「ハートセキュリティー」の一員としてイラクで殺害された斎藤昭彦氏(当時44歳)も、外人部隊でもっとも尊敬された日本人上級特務曹長だった。

 フランスでレジオネールと言われる隊員たちは、過酷な訓練に明け暮れる毎日をすごしているが、食事は充実している。世界の軍隊の中でもっともメニューが豊富で美味しいと言われ、豚肉とジャガイモのクリームソースあえや、フォアグラやパテといった一品料理に、昔はラム酒やウイスキーを携帯ボトルで持ち歩いていた。戦場でも酒やタバコを欠かさない。

 隊員たちの性的欲求の処理はさまざまだが、部隊によっては宿舎の周辺に外人部隊目当ての女が集まっていたり、ジャングルや砂漠地帯での訓練時に、特定の場所に女がいて、売春が行なわれていたりもするようだ。もちろん相応の金がかかる。

 月給は、1等兵で1000ユーロ(約12万円)、下士官で1500ユーロ(約18万円)程度、士官で2000ユーロ(約24万円)以上。それをタバコに費やす兵士もいれば、女や酒につぎ込む兵士もいる。コツコツと貯金し、宿舎からアパートに移り住む者もいる。

 外人部隊は現在でも紛争地域の前線に立ち、アフガニスタンやリビアでも高度な任務を果たしている。

 傭兵は売春とともに世界最古の職業と言われ、その起源は紀元前まで遡る。以来、戦争の“主役”を担ってきたが、近代国家が成立した19世紀以降は、各国で徴兵制や志願制による国民軍が創設され、傭兵は一般的ではなくなった。

 それでも世界に紛争があるかぎり、傭兵の姿が戦場からなくなることはない。彼らは今日も砲弾の下をかいくぐり、まさに命がけの毎日を送っている。

※SAPIO 2011年6月29日号

関連キーワード

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン