国内

原発賠償のため官僚たちが練る秘策 柏崎刈羽原発を売却する

 巨額の原発事故賠償金をどう捻出するか。東電は資産売却を進めているが、そんななか、霞が関でウルトラCが練られていた。ジャーナリストの須田慎一郎氏が報告する。

 * * *
 6月1日、経済産業省は産業構造審議会の産業競争力部会(部会長・伊藤元重東大大学院教授)に対して発電・送電部門の分離について検討課題として扱うよう指示を出した。

「発送電分離については絶対に認められない。議論することすらとんでもない」(西日本をエリアとする電力会社首脳)という言葉からもわかるように、電力業界にとってこのテーマはタブー中のタブーと言っていい。

 加えて電力業界と表裏一体の関係にある経産省もこの問題に対しては極めて消極的な対応に終始してきた経緯がある。それだけに前述したような経産省の動きは、ある種の驚きをもって受け止められたのだ。

「本音の部分では、電力業界とベッタリの松永和夫次官は、ハナから発送電分離なんてやるつもりはありません。ところが菅総理が、唐突に発送電分離を言い出したために、そうした“指示”を出さざるを得なかったのです」(経産省中枢幹部)

 しかしこの形式的とも言える“指示”は経産省内で思わぬ波紋を呼んでいる。

「経産省内部にも、発送電分離を中核とする電力自由化を積極的に推進すべき、とする改革派の官僚が少なからずいるのです。そうした改革派官僚にとっては、今回の東電の一件は、まさに千載一遇のチャンスです」(前出の経産省中枢幹部)

 福島第一原発で発生した事故を巡る損害賠償金は、軽く10兆円を上回る規模とされる。東電は、そうした巨額の資金を捻出するために、今後徹底的なリストラと資産売却が求められることになる。そうした状況を見据えた上で、改革派官僚たちが一気に発送電分離を進めるためにある秘策を練っているのだという。

「その秘策とは、東電の保有する『柏崎刈羽原発』の売却です。この原発は、連続的に使用できる出力である定格出力100万キロワット超の原子炉7基を有する世界最大の原発です。法制面も含めて実際に売却が可能かどうか、検証、検討しているところです」(経産省改革派官僚)

 その売却にあたって、入札という手法がとられたならば、状況によっては外国勢、たとえば仏・アレバ社なども参戦してくる可能性があるという。電力自由化を一気に進展させたいようだ。

 この秘策に対して新首相はどのような方針を示してくるのか。その行方には、要注目だ。

※SAPIO 2011年6月29日号

関連記事

トピックス

大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー役を務める稲垣吾郎
《ハリー・ポッター役が話題》稲垣吾郎、今も開花し続ける魅力 50代超えても“変わらないルックス”、嵐・櫻井とはワイン飲みながら“昔話”、共演者からは「人間じゃなくてバンパイア」評も出る
NEWSポストセブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
【新証言】「右手の“ククリナイフ”をタオルで隠し…」犯行数日前に見せた山下市郎容疑者の不審な行動と後輩への“オラつきエピソード”《浜松市・ガールズバー店員刺殺事件》
NEWSポストセブン
那須で静養された愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《「愛子天皇」に真っ向から“NO”》戦後の皇室が築いた象徴天皇制を否定する参政党が躍進、皇室典範改正の議論は「振り出しに戻りかねない」状況 
女性セブン
女優の真木よう子と、事実婚のパートナーである俳優・葛飾心(インスタグラムより)
《事実婚のパートナー》「全方向美少年〜」真木よう子、第2子の父親は16歳下俳優・葛飾心(26) 岩盤浴デートで“匂わせ”撮影のラブラブ過去
NEWSポストセブン
お気に入りの服を“鬼リピ”中の佳子さま(共同通信)
《佳子さまが“鬼リピ”されているファッション》御殿場でまた“水玉ワンピース”をご着用…「まさに等身大」と専門家が愛用ブランドを絶賛する理由
NEWSポストセブン
筑波大学で学生生活を送る悠仁さま(時事通信フォト)
【悠仁さま通学の筑波大学で異変】トイレ大改修計画の真相 発注規模は「3500万円未満」…大学は「在籍とは関係ない」と回答
NEWSポストセブン
2025年7月場所
名古屋場所「溜席の着物美人」がピンクワンピースで登場 「暑いですから…」「新会場はクーラーがよく効いている」 千秋楽は「ブルーの着物で観戦予定」と明かす
NEWSポストセブン