国際情報

麻薬の断り方 日本人は親をダシにし米国人は「私」を主語に

 おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれ。元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著者に『ベイビーパッカーでいこう!』や週刊ポスト連載をまとめた『アメリカなう。』などがある。おぐに氏が、日本とアメリカにおける「断り方の違い」について解説する。

 * * *
 日本人はNOといえない、というのが定説だけど、どうだろう。私自身は、結構平気で NO!といっちゃう方なので、「国民性というより個人差の方が大きいんじゃないかな~」と、今の今まで思ってきた。

 ある日、息子が「ドラッグ・アルコール・タバコ乱用防止テキスト」を学校から持ち帰った。見れば、「友だちからドラッグやタバコを一緒に吸おうと誘われた時の上手な断わり方」がずらり具体的に書いてある。

 な~んだ、わざわざこういうことを教えるなんて、やっぱりアメリカ人だって、「タバコ吸おうぜ」と仲間から誘われれば、なかなか「NO」とはいえないのね。結局、日本人と同じじゃん、と思ったんだけど……。実は、全然違うのよ。アメリカ版「断わり方」って……ああ、カドを立てまくり!

 息子のテキストによると、「断わる方法」の1番目は「NO と短く答えよう」だって。それができりゃ苦労しないよ。2番目は「『私』を主語にして拒否しよう。『私は嫌よ』と」。

 親をダシにする日本版(「夜回り先生」こと水谷修さんが作成した「友人からドラッグに誘われた時の断り方」では「『お母さん(お父さん)が怖いんだもん』と壊れたレコードみたいに繰り返す」というものがある)とは、まるで逆だ。3番目は「タバコは体に悪い。ドラッグは依存を形成する、など事実を相手に説明しよう」。って、そんなことしたら、余計に反発を食らっちゃうよ~。

 すごいのは4番目で、なんと「プレッシャーを相手にかけ返そう」。つまり「あなたのこと、親友だと思ってたのに。本当の親友なら体に悪いことを薦めたりしないものよ!」とか「そんな風に誘って、なぜ私を苦しめるの?」と逆に相手を責めてしまえ、と書いてあるのだ。ひええええ、日本の中高生には(日本のサラリーマンだって)、そんなこと、とてもできませ~ん!

 考えてみれば、日本版は「NOといわずに断わる方法」で、アメリカ版は「NOという方法」なんだよなあ。ああ、やっぱり日本人って、NOといえない国民なのかしらん。

※週刊ポスト2011年7月8日号
(「ニッポン あ・ちゃ・ちゃ」第151回より抜粋)

関連キーワード

関連記事

トピックス

警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン