国内

電力会社の若手記者原発視察 温泉&コンパニオン接待アリ

 ジャーナリスト・武冨薫氏の司会&レポートによる本誌伝統企画「覆面官僚座談会」。呼びかけに応えた官僚は経産省ベテランA氏、財務省中堅B氏、総務省ベテランC氏、経産省若手D氏、内閣府若手E氏の5人。政府の脱原発論議がなぜ迷走しているのか話し合った。

 * * *
――脱原発問題が迷走しているのは、「事故処理費用」をめぐる経産省と財務省の綱引きに政治も大新聞も巻き込まれているからか。

経産A:上層部は、原発を容認していた朝日新聞が菅首相の脱原発会見に合わせて「原発ゼロ社会」を提唱し、掌返したことにいきり立ち、財務省の動きに神経を尖らせている。これまでは電力業界が広告の力で原発推進をいわせてきただけだから、朝日の論調の変化自体は、原発事故をきっかけに左派路線=反原発に先祖返りしただけともいえる。ただ、自然エネルギーを増やして原発を代替するという議論はレベルが低すぎてお笑いだ。

財務B:メディアの科学的知見の乏しさを利用してきたのは経産省でしょう。朝日でさえ、「原発ゼロ社会」を社説に掲げた後に「玄海原発の停止で自動車生産が厳しくなる」と報じている。脱原発と騒いでいるのは一部で、記者クラブにはちゃんと毒が回っている。

経産A:毒ねェ……。確かに電力会社の記者接待は傍から見ても徹底している。東京電力の勝俣恒久・会長が震災当日に主要紙の幹部らと中国に行っていたことが話題になったが、そんなことはどの電力会社でも昔からやってきた。バスを仕立てて若手記者たちを「原発視察」に連れて行き、近くの温泉で宴会。コンパニオンをつけるのがお約束だ。ただし、それはあくまで電力会社がやったことだよ。

財務B:逃げないでください。そうして毒が回った記者が原発推進記事を書く際の資料は経産省が用意する。記者はそれで「電力会社に書かされた記事ではない」という言い訳ができる。D君も資料づくりをやらされただろ? で、それをやると上司に誉められて料亭に連れて行ってもらったはず。その費用も電力会社持ちさ。

――その費用は元をたどれば国民が払う電気料金です。どう思う、Dさん?

経産A:(D氏を手で制して)それはわが省の伝統だから、D君個人を責めても仕方ないだろう。

内閣府E:ウチも国の広報予算を新聞やテレビに撒いているから偉そうなことはいえません。ただ、経産省は電力業界に広報費を肩代わりさせているから、官僚も、接待を受ける記者も罪悪感がない。だから歯止めが利かなくなるんじゃないかな。

経産A:この状況だから批判は甘んじて受ける。でも(C氏に視線を向けて)、財務省は1円も使わずに復興増税の世論をつくった。主要メディアに税務調査をかけまくって黙らせたわけです。読売新聞が丹呉泰健・前財務次官を社外監査役に迎えたことも“偶然”のはずがない。メディア工作というならそっちの方が猛毒だと思う。

※週刊ポスト2011年8月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン