国内

難局乗り越えるには複数指導者体制・首相公選制導入必要

 日本の政界の人材不足・リーダーシップの欠如はあまりにも顕著だが、ただ呆れていても仕方がない。今の震災後の難局を乗り切れるかどうかに、日本という国家の命運がかかっていると言っても過言ではない。リーダーシップの欠如を補うにはどのような制度を作るべきなのか、大前研一氏が提言する。

 * * *
 現実問題として当座の難局をどう乗り越えるのか? 私はタンデム(2頭立て)かトロイカ(3頭立て)の複数指導体制でいくしかないと思う。

 実は、海外にはタンデム体制やトロイカ体制でうまく回っている国が多い。たとえば、イギリスはキャメロン首相とクレッグ副首相の2トップが1つのチームとして円滑に機能している。ロシアも主として内政はプーチン首相、外交はメドベージェフ大統領という役割分担によって安定感が増している。目立たないがラブロフ外相も有能だ。

 アメリカも、バイデン副大統領はともかく、オバマ大統領とクリントン国務長官のタッグによってグローバルな影響力を維持している。日本も首相以外に副首相などを置く2トップ、もしくは3トップのフォーメーションにして、しばらく凌ぐしかないだろう。

 そして最終的には、首相選びの方法を現在の議院内閣制から国民の直接投票に制度変更すべきだと思う。いわゆる「首相公選制」である。日本最後の宰相と私が思っている中曽根元首相も、若い頃には「首相を選挙で選ぼう」という立て看板を全国至る所に立てていたが、政治家の中からそうした議論が出てきてもおかしくない。

 公選が難しければ、「政権担当資格」という考え方を導入することを提案したい。そのルールはこうだ。原則として首相は、第一党の総選挙を戦った時の党首に限定する。もし第一党が組閣できなければ、第二党の党首を中心に連立を組んで組閣する。4年間の任期中に首相を代える場合は、その候補者の就任について、国民投票による承認を必要条件とする。

 そして、その期間内に代えられる首相は1人のみ。3人目にしたら「スリーアウト・チェンジ」で自動的に解散総選挙となる。4年以内に3人目を出さざるを得なかった当該政権政党は、たとえ第一党になっても政権は1回お休み、ということにする。

 このシステムなら、有権者は第一党の党首が首相になることを前提に投票できるから、選んだ覚えのない人が次々と首相になることはないし、1回の総選挙で首相が3人も4人も代わることもない。

 ただし、いずれにしてもリーダーシップのある首相が登場するには時間がかかる。それまでに日本が崩壊しないことを祈るばかりだ。

※SAPIO 2011年8月3日号

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン