国内

社会問題化する「差別語」を糾弾する側から書いた決定版の書

【書評】『差別語不快語』 小林健治著(にんげん出版)1680円(税込)

 多くの人がネット上で、自らの思いや感想、意見をブログやツイッター、その他のソーシャルメディアを通して発信している現代、新たなネット上の差別的な隠語、略語なども社会問題化している。

 そんな折に、言葉・言語表現による「差別語」「不快語」をテーマにした本が出された。著者は、部落解放同盟の幹部として、長年にわたって「差別表現」を糾弾してきた当事者で、メディアや諸団体との接触頻度もおそらく右に出る人はいない存在であろう。その意味では、数ある「差別表現本」の中でも、差別表現を糾弾してきた側からの論理、その真意が伝わってくる“決定版”ともいえよう。

 差別語、差別表現がメディアや公的機関、企業・団体で大きな社会問題となった背景には、〈60年代後半から80年代にかけておこなわれた、部落解放同盟による厳しい“部落差別表現糾弾”があったことは、多くの人が認めるところでしょう〉と、著者が記すように、今日問題視される、あらゆる差別表現問題は、ここに端を発しているといえよう。部落をはじめ障害者、職業、民族、人種、性差、マイノリティなどの差別表現問題はほとんど連動しているといっても間違いではなかろう。その証左は、本の中の豊富な実例を読んでもらえばわかる。

 いわば、「糾弾の歴史」ともいえる幾多の事例は、今日からすると、「へぇーこんなことが起こっていたんだ」「なるほど、だからいまでは……」と、今更ながら納得させられる。メディア関係者のみならず、自ら発信する一般の方々にこそ、しっかり読んでもらいたい1冊である。ちなみに巻末6ページにわたる「差別語索引」は実用に最適。

※SAPIO 2011年8月3日号

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
日本テレビの杉野真実アナウンサー(本人のインスタグラムより)
【凄いリップサービス】森喜朗元総理が日テレ人気女子アナの結婚披露宴で大放言「ずいぶん政治家も紹介した」
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン