国内

国会審議の長い答弁 「時間切れ終了」狙いわざとやっている

なぜ、国会議員は国会で、官僚が作ったカンニングペーパーをダラダラ読み上げるのか? 元行政改革担当大臣の補佐官で政策工房社長の原英史氏が解説する。

* * *
国会中継で、野党議員が首相や大臣らを厳しく追及しているシーンがある。その多くは委員会審議だ。

テレビニュースなどで断片的に流れる映像を見てもわかると思うが、大臣らは大抵、紙を持って読んでいる。あれは、官僚たちが用意する答弁資料。Q&A形式で質問と答えが書いてある“カンニングペーパー”みたいなものだ。

たまに、大臣が間違ったカンペを読み上げ始めてしまい、後ろに控える官僚が慌てて紙を差し入れたりしている。

なぜ官僚たちはあらかじめ答弁資料を作れるのか?

それは「質問の事前通告」というルール(与野党の申し合わせ)があるから。質問する議員たちは政府に対し、「今度の××委員会では、こういう質問をします」と通告する。さらに、「質問取り」という慣行があって、官僚たちが質問する議員のところに行き、詳細に内容を聞く。それに基づき膨大な答弁資料を用意するわけだ。霞が関官僚は、この答弁資料作成のために深夜まで残業し、そのために多くの税金が無駄遣いされている。

これらは、制度というより、申し合わせや慣行。制度上はむしろ、委員会審議については、〈委員は、議題について、自由に質疑し及び意見を述べることができる〉(衆議院規則45条、参議院規則も同様)と書いてある。もっと自由に議論することのほうが、本来の姿なのだ。

ところが、現実には、そんな自由な討議はまずない。

〈委員長は、委員会に諮り質疑、討論その他の発言につき、時間を制限することができる〉(衆議院規則68条、参議院規則も同様)という規定のほうを使って、質問する議員には必ず「制限時間」が割り当てられる。その時間内で、あらかじめ通告した内容に沿って質問し、答弁する側はカンペを見て答えるのだ。

時間制限には、2つの方式がある。質問を述べている時間だけをカウントする「片道」方式と、質問と答弁を合わせたトータルで制限時間を設定する「往復」方式。慣例上、衆議院の委員会では「往復」方式が通常だ。

これで何が起きるか。

国会審議を見ていると、「イエス」「ノー」で答えればいいことを、長々と意味不明の答弁をしていることがよくある。あれは、「往復」方式の審議で、特に野党議員から厳しい追及を受けた時、「時間切れ終了」に持ち込むためにわざとやっていることが多い。

答弁資料を用意する官僚の側もわかっているから、わざとお得意の役人言葉を連ねた、なが~い文章を用意しておくわけだ。

※SAPIO 2011年8月3日号

トピックス

復帰会見をおこなった美川憲一
《車イス姿でリハビリに励み…》歌手・美川憲一、直近で個人事務所の役員に招き入れていた「2人の男性」復帰会見で“終活”にも言及して
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相の「官僚不信」と霞が関の警戒 総務大臣時代の次官更迭での「キツネ憑きのようで怖かった」の逸話から囁かれる懸念
週刊ポスト
男気を発揮している松岡昌宏
《国分騒動に新展開》日テレが急転、怒りの松岡昌宏に謝罪 反感や逆風を避けるための対応か、臨床心理士が注目した“情報の発信者”
NEWSポストセブン
水原受刑者のドラマ化が決定した
《水原一平ドラマ化》決定した“ワイスピ監督”はインスタに「大谷応援投稿の過去」…大谷翔平サイドが恐れる「実名での映像化」と「日本配信の可能性」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン
現在は三児の母となり、昨年、8年ぶりに芸能活動に本格復帰した加藤あい
《現在は3児の母》加藤あいが振り返る「めまぐるしかった」CM女王時代 海外生活を経験して気付いた日本の魅力「子育てしやすい良い国です」ようやく手に入れた“心の余裕”
週刊ポスト
熊本県警本部(写真左:時事通信)と林信彦容疑者(53)が勤めていた幼稚園(写真右)
《親族が悲嘆「もう耐えられないんです」》女児へのわいせつ行為で逮捕のベテラン保育士・林信彦容疑者(53)は“2児の父”だった
NEWSポストセブン
リクルート社内の“不正”を告発した社員は解雇後、SNS上で誹謗中傷がやまない状況に
リクルートの“サクラ行為”内部告発者がSNSで誹謗中傷の被害 嫌がらせ投稿の発信源を情報開示した結果は“リクルートが契約する電話番号” 同社の責任が問われる可能性を弁護士が解説
週刊ポスト
上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン