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「脱原発は簡単にはできない」という主張には2つの問題アリ

 様々な業界でお役所が差配する「変なルール」「バカなルール」を指摘する話題の新刊『「規制」を変えれば電気も足りる』(小学館101新書)を上梓した元経産省キャリア官僚の原英史氏(現・政策工房社長)が、電力業界のおかしな規制制度を解説する。
 
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「脱原発」について、大論争になっている。

「脱原発」がそう易々とできない一因としてよく出てくるのが、「電気料金が高くなる」という議論だ。政府と電力業界の従来の説明によれば、キロワット時あたりの発電コストは、水力11.9円、石油火力10.7円などに対し、原発は5.3円と圧倒的に安い。火力や、さらにはるかに高コストの太陽光などに切り替えたら、電気料金が急増する。そんなことになったら、電気を大量消費する産業は、海外に逃げてしまうというのだ。産業界にはこの論拠で「やはり原発は必要」と主張する人が少なくない。

 だが、この主張には2つ問題がある。第一に、「原発が安い」は虚像であること。5.3円というコストには、政府が支出している各種補助金などはカウントされていない。さらに、ひとたび事故が起きた場合の事故処理・賠償コストなども含まれていない。

 第二に、日本ではこれまで原発を50基以上稼働させてきたにもかかわらず、電気料金が各国と比較して決して安くない。資源エネルギー庁が公式発表している国際比較データによれば、徐々に安くなってきたというが、それでも米国の2倍近い額が続いている。

 ということは、「電気料金を下げろ」と言いたいなら、「原発続行」を唱えるより、まず現行料金が高すぎることに文句をつけるべきなのだ。ところがどういうわけか、産業界の重鎮たちは、「原発続行」は唱えても、電力会社には文句をつけようとしない。

 電気料金が高い要因は、「地域独占」「発送電一貫」「総括原価方式」という、“電力規制3点セット”。そして、こういう本質論を置き去りに、「原発続行」だけが唱えられる背景には、産業界と電力会社とをつなぐ“電力村”がある。その“電力村”を生み出しているのも、また規制なのだ。

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