国際情報

トモダチ作戦コゼニスキー大佐「ここは日本流でやる」と指令

 今回、本誌SAPIOでは東日本大震災で活躍した自衛隊員や、その関係者たち120人に総力取材を行なった。ここでは陸上自衛隊 幕僚監部 国際防衛協力室長の笠松誠1佐の話を紹介する。

 * * *
 私は3月18日に仙台空港に入りました。日米共同調整所の現地調整所長として、日本側の関係者と「トモダチ作戦」で参加した米軍との間に立ち、復旧作業を調整するのが任務でした。

 日本側からは国交省、県庁、空港事務所、空港土木を請け負う民間業者等、米軍側からは陸軍、空軍、沖縄とキャンプ・フジの海兵隊の各指揮官、そして自衛隊から私が参加して、毎朝9時から調整会議を開きました。

 一刻も早く仙台空港を復活させたいという思いは、みんな一緒です。でも、そうした思いが強い分だけ焦りが募り、齟齬も大きくなるのです。

 会議では、実は言葉の壁なんて大したことじゃない。身ぶり手ぶりを交えて何度も説明すれば、だいたいお互いに言いたいことは伝わるものです。それよりも一番の障害となるのは、カルチャーギャップ、考え方の相違です。

 たとえば、効率的な作業を求める米軍側が「今、何をして欲しいのか言ってほしい」「こうすれば作業が捗るじゃないか」と要求するのに対し、日本側は「これをやって」とか「それは困る」ということがなかなか言えない。そのうち相手への不信感を募らせてしまう。

 そんな中で、今回の作戦がうまくいった理由の一つは、米軍の中に日米のギャップの存在を理解してくれている人がいたことです。その一人、被災地派遣を上司に直訴して自ら仙台空港に駆けつけた海兵隊のコゼニスキー大佐は、部下たちに何度となく「ここはアメリカじゃないんだ。日本流でやろう」と言い聞かせてくれました。

 今回の作戦がうまくいったもう一つの理由は、プロフェッショナルと呼ぶべき方たちが多かったことです。中には、人工呼吸器を着けた重病の子供を抱えながら被災して本当に苦労していたのに、そんなことをおくびにも出さずに毎朝の会議に出席していた方もいました。すべては一日も早い復旧のためにベストを尽くしてくれていたのです。

 結果、当初は半年かかると思われた復旧作業は、わずか3週間ほどで航空機の離発着が可能になりました。

 作業を終え、米軍が発つというその日、大坪守空港長が突然、彼らを集めました。何をするのかと思っていたら、「感謝の言葉……」というお礼の文章を読み始めたのです。純朴な、しかし感謝の気持ちがいっぱい詰まった空港長の言葉を聞きながら、私は思わず涙してしまいました。トモダチ作戦のチームの心が一つになった瞬間でした。

※SAPIO2011年8月17日・24日号

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