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死後判明した夫の借金返済義務 「相続放棄」できる場合も

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「夫の死後、借金を遺していたことがわかりました」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 夫が亡くなった後、遺品を整理していたら借用証の控えが出てきて、借金があったことが判明しました。本人名義の財産がない場合、家族に返済義務があるのでしょうか。もし請求があった場合、どのように対応するのがいいでしょうか。なお、家や土地は妻である私名義のものです。

【回答】
 相続は、被相続人の法律上の地位を相続人が承継するものであり、不動産や預貯金、現金などのプラスの財産だけでなく、ローンなどの債務も引き継ぎます。そこで仮に財産が何もなく、借金だけが残ったという場合でも、相続人は債務を相続して返さなくてはなりません。

 ご質問の場合、債権者はあなたの名義の家や土地といった相続人の固有の財産からも債権の回収ができます。しかしそれでは相続人が気の毒です。そこでこのような場合に備えて相続放棄の制度があります。

 相続を開始したときに相続人がとることができる方法として、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類がありますが、そのうちの一つです。民法939条で「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」とされており、最初から相続人ではないことになるので、被相続人の借金も相続しません。

 相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申し立てをして行ないます(相続放棄の申述)。ただし、相続が始まったことを知ってから3か月以内に申述することが必要です。この期間(熟慮期間といいます)を超えると放棄できず、単純承認として普通に相続したことになります。また、遺産を処分したり、浪費した場合も単純承認したものと看做されます。

 熟慮期間が経過してしまった場合について、最高裁は、相続財産の調査などが困難で、相続財産が全くないと信じたために相続放棄をしなかった場合、相続人が相続財産について認識することができた時点から3か月を計算すべきだと判断しました。

 予想外の請求で借金のあることがわかった場合に、相続放棄を認めてもらえる可能性があるのです。あなたも借用証の控えが見つかった以上、直ちに相続放棄の手続きを取るべきです。

※週刊ポスト2011年9月2日号

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