国内

日立と三菱重工の統合凍結 『三菱』の商号維持に不安があった

 日立・三菱重工「統合」記事で、両社にすきま風が吹き始めた。いったい何が起こっているのか。ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。

* * *
「日立・三菱重工連合の最大の狙いは、東芝包囲網を構築することにあったと言っていい。その点では、両社の思惑は一致しているのだが……」

 三菱重工役員がこう言葉を濁す。

 さる8月4日、日経新聞朝刊が一面トップで、「日立・三菱重工統合へ13年春に新会社 世界受注へ巨大連合」とタイトルされたスクープ記事を掲載した。しかし、日経の報道をきっかけに両社の経営統合へ向けての動きは、急激に失速し実質的に凍結という格好となってしまった。

「今回は完全に日立サイドが前のめりになっていた。日経にリークしたのも日立だろう。日経に書かせ、経営統合を既成事実化しようとしたのだろう」(前出の三菱重工役員)

 もっとも日立の経営トップが前のめりになるのも無理からぬところだ。仮に両社の経営統合が実現すれば、売上高は12兆円を超える世界最大級の総合インフラコングロマリットが誕生することになるからだ。

「今後、BRICsなどの新興国では、400兆円にものぼるインフラ投資が発生することが予想されています。そしてこの分野でしのぎを削っている日本勢は、日立、三菱重工、そして東芝です。

 そうした競争の中でもともと親密な関係にあった日立と三菱重工が経営統合すれば、対東芝という点で優位に立てると踏んだのでしょう」(メガバンク首脳)

 最大のネックとなったのは、三菱重工の三菱グループ内での立場だ。

「重工は、三菱グループの中核企業だ。三菱グループは、何よりも『三菱』という商号を重要視し、グループ外の他社との経営統合では主導権の確保に重きを置いてきた。

 日立の企業規模は、重工の約3倍。経営統合に踏み切った場合に、『三菱』という商号を守り、主導権を確保できるのかどうか。その答えは、おのずと明らかだ」(三菱グループ首脳)

 さらに今回の報道により、これまで良好だった両社の関係に少なからず影響があると指摘する声もある。

「日立のリークを疑い、不信感を強めている人間は多い」(三菱グループ首脳)

 日立の勇み足だったとすれば、その代償は非常に大きい。

※SAPIO 2011年9月14日号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン