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2011.09.02 07:00  週刊ポスト

粋でいなせな「江戸っ子」演じて最も似合う噺家は春風亭一朝

 広瀬和生氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が「粋でいなせな江戸落語」と評するのが、春風亭一朝だ。

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 江戸前の芸、という言い方がある。「江戸前」とは江戸近海(芝、品川あたりの海)もしくはそこで取れた新鮮な魚のことで、転じて「江戸独特の流儀」を指す言葉となったわけだが、落語で「江戸前の芸」というと、そこに「江戸っ子の気っ風の良さ」のイメージが加わる。

 イキが良くてキレがある「これぞ江戸前の芸!」という落語が聴きたければ、真っ先にお勧めしたいのが春風亭一朝。今をときめく若手のホープ春風亭一之輔の師匠としても知られる、1950年生まれの噺家だ。

 一朝は、亡き五代目春風亭柳朝の一番弟子。もともと八代目林家正蔵(後の彦六)への入門を希望していたが、1968年当時、正蔵が新たな弟子を取る余裕が無かったため、一門の総領弟子である柳朝に入門することになったのだという。

 1973年、二ツ目昇進に際して「春風亭一朝」を襲名、1982年に真打。「一朝」という名は、八代目正蔵が若き日に芝居噺や怪談噺を教わり、晩年の面倒を見た三遊一朝(1930年没)から譲り受けたものだ。

 五代目柳朝は60年代に古今亭志ん朝、立川談志、五代目三遊亭圓楽らと共に「若手四天王」と称され、その威勢のいい芸風から「江戸前の噺家」の典型とされた。柳朝の落語家人生を描いた吉川潮氏の小説のタイトルは、そのものズバリ『江戸前の男 春風亭柳朝一代記』である。

 一朝は、その柳朝の「江戸前」の芸風を見事に受け継いでいる。啖呵を切る威勢の良さは天下一品、「江戸っ子」を演じたらこれほど似合う噺家も珍しい。まさに「粋でいなせな江戸落語」の典型だ。

※週刊ポスト2011年9月9日号

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