スポーツ

強くなった日本の女子バドミントン 背後に韓国人コーチの存在

小さな体で世界制覇を果たした女子サッカーなでしこジャパン。日本人の肉体的資質の弱点はサッカーだけに限らない。だがその弱点を克服して工夫と努力で世界の頂点に立とうとしているアスリートたちがいる。なでしこジャパンに次いで世界一を狙える日本のスポーツは何か。スポーツライターの折山淑美氏はバドミントンとフェンシングだと指摘する。

* * *
記録との闘いではなく相手との対戦競技の場合、強くなるために最も必要なのが、よりハイレベルな戦いをいかに多く経験しているかということだ。

アテネ五輪以降、招聘した外国人コーチの力を借りながら、世界のトップと戦う機会を増やすことで実績を上げているのがフェンシングとバドミントンだ。

両競技ともマイナーであったが故に、代表合宿も世界選手権の直前に数日間やる程度で、ナショナルチーム自体が機能していなかった。

現役時代には五輪や世界選手権の優勝経験もあり、“ダブルスの神様”とまで称されたバドミントンの朴柱奉(韓国)は、合宿を充実させ、出場する試合もそれまでとは違ってすべてトップレベルの大会のみにした。

その改革が、11人が出場して1勝9敗だった2004年アテネ五輪の成績を、2008年北京では女子ダブルス末綱聡子・前田美順ペアの4位を筆頭に、男女ダブルスでそれぞれ5位と男女シングルスベスト16まで躍進させた。

一方、競技者としてもコーチとしても実績がなかったフェンシングのオレグ・マチェイチュク(ウクライナ)は、直接指導する選手の成績を飛躍的に上げることで、自然に選手が集まり、ナショナルチームとして練習できる環境をつくった。

そして北京五輪前には協会にフルーレ(「突き」だけを用いる競技)に焦点を絞った500日合宿実施に踏み切らせ、太田雄貴の銀メダル獲得に至ったが、それ以前にも世界ジュニアや、年齢区分が15・16歳の世界カデの男子フルーレ2名が優勝するという実績を残している。

朴とマチェイチュクが取り組んだのは、選手が持っていた外国人選手へのコンプレックスの払拭と、勝つための戦術を事細かに教え込むことだった。さらに対戦中に相手の癖やスタイルを見抜く眼を鍛えることと、想像力を駆使して戦う意識を持たせること。

選手たちのそんな意識も、好成績に終わった北京を経て飛躍的に向上し、真の戦う集団に変貌している。

その結果バドミントンでは100年の歴史を持つ全英オープンで男女シングルスで2位になった他、最高峰のスーパーシリーズでも優勝者を出し、特に女子ダブルスでは世界ランキング2位、4位、6位を占めるまでに。

一方フェンシングは、ロンドン五輪での太田のメダル獲得のみならず、現在世界ランキング3位の男子フルーレ団体でも、ロンドンで頂点を狙える位置にまでなっている。

また今世界に肉薄している卓球も、中学生時代から世界の大会へ派遣したり、ヨーロッパや中国のプロリーグに留学させたりした取り組みが成果を出している。

今年、女子サッカーワールドカップで世界一を成し遂げたなでしこジャパン。その勝因の第1は、監督が戦うためのコンセプトを明確にし、相手を徹底的に研究したこと。そして選手もそれを信じて最後まで戦い抜いたことにある。なにより日本女性の「諦めない心」が日本に金メダルをもたらした。

身体の大きさや身体能力だけが絶対ではないこれらの対戦競技。発想を新たにし、実戦を積み重ねながら頭脳や想像力を鍛えることで、今や世界へ肉薄してきたのだ。

※SAPIO 2011年9月14日号

関連キーワード

トピックス

被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン