国内

明治期~昭和初期にできた東京の埋立地は液状化の可能性低い

「内陸だから大丈夫」――東日本大震災では、従来のそんな認識を覆す液状化現象が起きた。液状化するか、しないかの分かれ目は「地形」にある。40年以上前から液状化の研究をしている関東学院大学工学部教授の若松加寿江さんによると、以下の条件に当てはまる場所では、液状化が頻発し、震度4程度の比較的弱い地震でも液状化することがあるという。

【1】戦後の新しい埋め立て地
【2】大河川の沿岸
【3】昔の川筋があったところ
【4】沢や沼を埋めた造成地
【5】海岸砂丘の裾、砂丘間低地
【6】砂鉄や砂礫を採掘した跡地の埋め戻した土地

若松さんは、過去750年間で液状化した地点を調査。首都圏では、千葉県の湾岸沿いに液状化した地域が集中している。

「ここは、【1】の埋め立て地に当たります。高度成長時代以降に造成された土地が多く、埋め立てに使われたのは主に海底の砂。1987年の千葉県東方沖地震により大規模な液状化が起こりました」(若松さん)

関西圏で見られる兵庫県湾岸部の液状化地帯も、山間部の土を切り崩して地盤を造成していた。

一方、同じ湾岸の埋め立て地でも、東京都内では比較的少ないのはなぜだろうか。

「都心に近い埋め立て地は、明治期から昭和初期にかけて造成されたので、年数を重ねるなかで締め固められ、地盤が安定してきたと考えられます。東日本大震災では一部で液状化しましたが、大きな被害にはなりませんでした。しかし、東京から横浜にかけての戦後の埋め立て地は、今回よりもっと強い地震が来たら大規模な液状化が発生すると予想されます」(若松さん)

首都圏では荒川や多摩川沿い、東海圏では天竜川や木曽三川沿い、関西圏では淀川沿いといった大きな河川周辺で液状化が多発している。

「これは主に【2】の大河川の沿岸にあたります。昔は治水技術が発達しておらず、大河川沿いは頻繁に氾濫が起きていました。氾濫が起きるたびに、周辺には土砂が堆積するので、地盤が非常に緩くなるんです。また、河川周辺は地下水脈があり、水位が浅い。液状化が起こりやすい条件が揃っています」(若松さん)

とりわけ危ないのは、川が合流したり、蛇行していたりする土地。氾濫常習地帯で液状化しやすいと推測される。

また、川がまっすぐに流れている土地でも【3】の昔の川筋があったような場所は注意が必要だという。

「治水のため、蛇行部分の川の流れをまっすぐに変える工事が明治以降、盛んに行われてきました。このような土地は、もともと氾濫常習地帯で、地盤が非常に緩くなっていると予想されます」(若松さん)

数は少ないが、大きな河川沿いではない内陸部でも、ポツポツと液状化が発生している。

「田んぼになる以前は湿地や沼だったところが特に危険になっています(【4】)」(若松さん)

例えば、東日本大震災でも、内陸部の埼玉県久喜市や千葉県我孫子市で大きな液状化被害があった。

また、3大都市圏からは外れるが、新潟県などの日本海側では、河川沿いでも埋め立て地でもない土地で液状化が頻発しているという。

「季節風の影響で日本海側は砂丘ができますが、この地盤は砂がさらさらで緩いので地下水が加われば液状化が起きやすい。また、砂鉄の採掘をするために大きな穴を掘り、その後砂で埋め戻した砂州などでも液状化しやすい。今回の地震でも千葉県九十九里浜の北部で発生しています」(若松さん)

※女性セブン2011年9月29日・10月6日号

関連記事

トピックス

橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン