国内

陸前高田の被災者「自分で動かないと変わらない」と会社設立

 震災から半年を経て、被災者たちの生活の場が変わっている。新しい土地へ引っ越す人もいるが、多くは地元での再起を目指して仮設住宅にはいる。仮設住宅で暮らす家庭への密着取材を行うと、そこから見えてきたのは、細かな生活の悩みや将来への不安、癒えない心の傷、そのうえで抱く明日への希望の断片だった。

 岩手県陸前高田市内の仮設住宅で暮らす本山裕幸さん(仮名・42)も大切な家族を失った被災者のひとりだ。

 本山さんは津波で姉夫婦を亡くした。姉夫婦には3人の子供(8才男児、7才女児双子)がいたが、自分以外に身寄りがない甥っ子たちを全員引き取った。

 本山さんには7才と4才の娘がおり、現在は妻と母を加えた8人で暮らしている。

「朝、晩は仕事の合間をぬって妻が子供たちを学校まで送り迎えしています。子供たちはみんな元気ですよ。7、8才だから自分が置かれている状況もわかっているし、時折思い出すこともあると思います。それでも、悲しい様子を見せないようにしているのか、いまは私たちの家族として元気にやっています」(本山さん)

 住まいは3Kタイプ。8人家族には手狭だったため、もう1戸希望したところ、最近同じ仮設内にある2DKを借りることができた。食事や生活は3Kタイプの仮設で行い、就寝するときに母と子供たちが2DKに移る。

 本山さんは震災で仕事を失った。それでも「自分で動かないと何も変わらない」と奮起し、8月に知人と新しい建設会社を立ち上げた。亡くなった親族のためにも、家族のためにも、この町で再起していこうと心に決めている。

「いま仮設住宅にいる人は陸前高田に生まれ育ち、この町をそう簡単に捨てるつもりのない人たち。もしくは他に行くあてのない人たちです。町の未来はまだ見えませんが、今後はそうした地域を愛する人たちでガッチリと組んで、町をつくっていかなければなりません。その後ろ姿を見て、子供たちが何を感じ取ってくれるか。子供たちが希望を持って生きていける環境をつくることが何よりの復興だと思っています」

 各々が希望を胸に、仮設住宅の人々は毎日を必死で生きている。

※女性セブン2011年9月29日・10月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン