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大前研一氏 「TAM」型リーダーより「CKD」型リーダー推し

 野田佳彦新首相が誕生し、日本の首相は2006年の安倍内閣以降ほぼ1年ごとに交代して6人目となった。他の国では例がない。なぜ、こんなにクルクル代わるのか? 大前研一氏が解説する。

 * * *
 最大の理由は、リーダーに求められる資質が変化したからだと思う。私が最新著『「リーダーの条件」が変わった』(小学館101新書)の中で述べたように、今の時代は国家も企業も環境が激変して想定外の危機に直面し、これまでの知識・経験・常識が通用しなくなっている。
 
 政治家を支援すべき官僚たちも、かつての秀才だから新しい状況には打つ手がない。そういう状況下では従来の延長線上でしか答えを見つけられないタイプ、いわば“トンネル(T)の出口の明かり(A)を目指す(M)”――つまり「TAM型」のリーダーは役に立たない。
 
 2010年8月に起きたチリ鉱山落盤事故のように、トンネルの出口は見えず、薄明かりすらない絶望的な事態でも、柔軟な思考で解決策を打ち出して打開できるタイプ、いわば“チリ(C)の鉱山(K)落盤事故からの脱出(D)”――つまり「CKD型」のリーダーが必要なのである。

 とはいえ、日本の場合も歴史を振り返ると「CKD型」のリーダーたり得る人物が数多現われた時代が何度かあった。たとえば戦国時代には、天下統一の力量を持った人物が、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のほかにも、毛利元就、上杉謙信、武田信玄、伊達政宗など20人ぐらいはいたのではないだろうか。

 なぜ戦国時代に優れたリーダーが数多く生まれたのかといえば、現在のような中央集権ではなく完全な地方自治で、強い者が勝つ、すなわち「弱肉強食」のルールしかなかったからだと思う。

 戦国武将は常に“国家の危機”と隣り合わせだったので、強くなって生き残っていくためには、家臣や領民を鼓舞し、殖産興業を推し進めて富を蓄え、隣国に隙ありと見れば攻撃して領地を拡大しなければならなかった。

 逆に、隣国から攻め込まれた時はどのように防御するか、籠城戦になった場合は食糧や飲み水や塩などをどのように調達するか、逃げ道をいかに確保するか、といったことを大名1人、あるいは家老と2人ぐらいで周到に練っておく必要があった。

 つまり、国家が存続していくための手段や方策を自分で決めていかねばならなかったから、創造力や危機管理力に長けた「CKD型」のリーダーが生まれ易い土壌ができたのである。

※週刊ポスト2011年10月7日号

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