芸能

「役者らしさ」にこだわりホテル暮らしを貫いた杉浦直樹さん

『岸辺のアルバム』『父の詫び状』といったドラマに出演し、名脇役として知られていた杉浦直樹さん(享年79)が9月21日、肺腺がんのため、息を引き取った。

 杉浦さんは1931年(昭和6年)、愛知県岡崎市に生まれた。5人きょうだいの三男で、日大芸術学部を中退後、劇団を立ち上げ、舞台で活躍。そして1957年に石原裕次郎主演の『俺は待ってるぜ』で映画デビューした。その後、山田太一脚本の『岸辺のアルバム』(TBS系)をはじめ、数多くのドラマや映画、舞台に出演。向田邦子脚本の『父の詫び状』(NHK)では、頑固な父親役を好演、代表作のひとつとなった。渋い二枚目からコミカルな役までこなす名優だった。

 1958年、26才のときに3才年上の女性演出家と結婚したが、13年後の1971年に離婚。その後は、ひとりでホテル暮らしを始めた。当時、彼は役者としてある信念をもつようになっていた。それは、「役者は生活のにおいを出してはいけない」というものだった。ゆえに離婚後は“家を持たず、結婚自体も否定、生涯独身を貫く”とまで話していたという。そして役者一筋の生活を貫いていた。

 しかし、2006年9月、杉浦さんは脳梗塞で倒れ、右半身にあまり動かない状態になってしまう。この時、杉浦さんを支えたのがそれまで10年以上も、内縁の妻として連れ添ってきた仁美さん(51)だ。舞台関係者はこう話す。

「仁美さんは、24時間看護師のような働きぶりでした。言葉をはっきりとしゃべるためのリハビリとして、杉浦さんが昔使っていた台本を使って、一緒にセリフ読みをしたりしていました」

 彼女の献身的な姿が彼の信念を揺り動かしたのか、脳梗塞で倒れてから1年後、杉浦さんはある決意をする。

「彼は1度結婚に失敗してからは結婚もせず、子供もつくらず、役者の道をまい進してきた。しかし、病に倒れ、役者の世界から遠ざかると、いつも側にいてくれる仁美さんの存在がいかに大切かがわかったんだと思います。彼女に“入籍しよう”と申し出たんです」

 こうして2007年夏、杉浦さんと仁美さんは、晴れて夫婦となった。

※女性セブン2011年10月13日号

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