芸能

宝塚男役 リーゼントの髪1本も額に落としてはいけぬ鉄の掟

 大地真央(55)、黒木瞳(50)、天海祐希(44)など、多くの女優を輩出した宝塚歌劇団。その宝塚歌劇団に入団するには、2年制の宝塚音楽学校で学び、卒業することが、最低条件となっているのだが、その校風はマナーの厳しさで知られている。

 1年生は予科生、2年生は本科生といわれ、予科生は掃除や日常のルールなどすべてを、先輩である本科生から教え込まれる。この規則の厳しさ、細かさは、ほかには類を見ない。

「学校の廊下では私語は許されず、階段の上り下りは壁に沿って一列に、校外を連れ立って歩くときは二列、予科生は常に上級生を気遣い、笑い顔を見せることさえ、まれです。電車の最後尾に乗るのは、教師や本科生が予科生を指導しやすいため、というのがその理由だと思います。また、宝塚は阪急電鉄に属する組織ですから、電車を利用されるお客様に対する礼、という意味もあるようです」(87期生のOG)

 服装も細かく決められる。グレーの制服、制帽のほか、白の三つ折りソックス、黒靴、プライベートでも紺、黒、白、茶色の服に限られ、アクセサリーやブランドものは厳禁。

 この制服とは別に、入学式や卒業式で着る黒紋付の着物と緑の袴も用意する。

 髪形は、男役はショートでリーゼント、女役は毛先まで固く編み込まれた三つ編みと決められている。その男役、女役は背の高さや骨格などで、在学中に決められるという。 月組の男役として、麻吹由衣加の名前で活躍した比嘉里衣子さんはこう語る。

「入学後は、それまでの自分の人生では考えられないところに気を使わなければならないのが、大変でした。リーゼントにした髪も、1本でも額に落ちたり、後れ毛があってはいけないんです。“前髪でタップが踏めるくらい固くしときなさい”といわれていました」

 先輩後輩の間の礼儀も厳しく、先輩の姿を見かけたら、遠くにいても直立不動で挨拶をする。先輩が部屋にはいろうとするのを見かけたら、必ずさっと素早く走り寄って、戸を開ける。

「午前中にはバレエ、声楽の授業があり、昼休みをはさんで午後からは日舞、楽器、ダンス、楽典の授業。着物に着替える前でも休憩は10分だから常に大急ぎでした。この10分で、レオタードから着物に着替えたり、もしも先輩に失礼なことをしたら、先輩が気づいたか気づかないかは関係なく、“これこれこういう失礼をしました”と謝罪もすまさなければならないんです」(87期生のOG)

 いっときも気が休まる瞬間がないのだ。こうした規則に加えて、宝塚といえば語り伝えられるのが、掃除だ。

 掃除は代々上級生から下級生に教え、伝えられるのだが、ほうきで掃いて、ぞうきんをかけるのは当たり前。舞踊のレッスン場などは、拭いたあとに、粘着テープを手に巻いて、木屑はもちろん髪の毛1本も見逃さないで取る。

「はだしで稽古することも多いので、とげなど刺さったら大変ですからね」と、大阪大学で宝塚歌劇史を研究する作家の草葉達也さんは語る。

 ピアノの鍵盤と鍵盤の間を、綿棒で掃除する生徒もいるという。

「授業は朝9時からですが、7時半には掃除を始めます。レッスン場、教室、トイレなど、すみからすみまで磨きあげます。トイレも“寝転べるくらいきれいだった”という先輩がいますが、本当です」(87期生のOG)

 50年前、1960年入学の48期生のOGがいう。

「生徒がぞうきんを使い、トイレの隅々まできれいにしていましたね」

 天海祐希も著書『明日吹く風のために』のなかで、<音楽学校はどの部屋もみんなピカピカで、トイレだって頬ずりできるほどの清潔さだ>と書いているほど。その天海の掃除担当場所は廊下だったが、掃いて、モップをかけ、やはり粘着テープでほこりを徹底的に退治したという。

 1998年に新校舎に移ってからは、トイレ掃除を生徒がすることはなくなったというが、教室などの掃除はいまだに生徒自身で行っている。

※女性セブン2011年10月13日号

関連記事

トピックス

映画『国宝』に出演する吉沢亮と横浜流星
『国宝』の吉沢亮&横浜流星、『あんぱん』の今田美桜&北村匠海、二宮和也、菊池風磨、ダイアン津田…山田美保子さんが振り返る2025年エンタメ界で輝いた人々 
女性セブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン