国内

2012年人類滅亡説 トーンダウンは「震災の影響」と専門家

 マヤ文明のマヤ暦が2012年12月に終わっていることから浮上した2012年人類滅亡説。数年前には関連本が出版されたり、ハリウッド映画も公開されたりと、ブームになったが、いまではあまり話題にならなくなってしまった。最近では、“その日”が2011年10月28日ではないかという説も出ていたが、ツイッターなどでは否定的な声ばかり目立った。いったいどうして、以前ほど騒がれなくなってしまったのか? 心理学者で駒沢女子大学人文学部教授の富田隆氏に聞いた。

 * * *
 まずブームになった理由ですが、こういった話を広める動機というのはいくつかあるんです。毎日同じような生活を送っている人にとって“何月何日、人類最後の日になる”という話は、それによって限られた貴重な時間を生きていることに気づかされます。非日常を演出するテーマが現れたことで、一期一会といいますか、限られた時間を一生懸命生きなきゃいけないみたいな、ある種の高揚感を得て、その非日常を楽しみたいという気持ちが生まれる。そういう動機で話しを広める人がいるわけです。

 もっともらしい話ですよね。マヤの暦がこの日で終わっているぞと、マヤ文明は天体観測もやっていて、マヤの暦というのは現代人も驚くほど精巧にできているから、なにか理由があるんじゃないかと。話としては非常に興味深いですよね。世の終わりが来るかもしれないというのは誰にとっても重大なことですから、そういった話を自分が詳しく知っているとすれば、それを話すことだけで盛り上がりますから、話し手としては気持ちがいいわけです。優越感に浸れることが、ひとつの動機になるのです。

 しかし、数年前に比べるといまは、この話を知ってる人が多いので、聞いた人がそれほど関心を示さない。それ以上、話が盛り上がらないのです。これが、いま人類滅亡説が盛り上がらない理由のひとつです。

 もうひとつの背景として、東日本大震災の影響が考えられます。余震の恐怖や、放射能の脅威があるなど、目の前に現実的な危機がある。そんなときに、非日常を演出する必要がないわけです。いま、われわれは誰もが非日常の中で生きていますよね。とくに被災地のかたや、原発や被災地に関係する仕事をしているかたなど、身近に震災を感じている人にとっては、まだ非日常は続いています。そういうときに、非日常的なこういった話をしても、盛り上がりようがない。もうたくさんだという感情に誰もがなってしまうんです。

 ほかに考えられるのが、その日が近づいてくると、やっぱりどこかで、本当かもしれないと思う気持ちと、そうあってくれては困るという気持ちが“ケンカ”をし始めるということもあるでしょう。世紀末に世が終わるという話は、19世紀から20世紀になるときにもありましたし、20世紀から21世紀に変わるときにもありました。ノストラダムスの大予言なんてまさにそう。ところが、実際にそのときに近づくと、人間というのは、新しい世紀を迎えることによる、希望の話、前向きな話も始めるわけです。

 ですから、こういった話は、少し余裕をもって楽しむぐらいで臨むのがいいんじゃないでしょうか。われわれはときどき、一期一会の、限りある時間を生きているということを思い出す必要があります。限られている時間の中で、自分は何をしたいのか、どう生きるのか、ということは誰もがつねに問われていることだと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン