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TPP参加 既得権持たぬ若者から賛成の叫び求むと落合信彦氏

TPPの問題が日本を二分している。交渉参加が決定しても、国内の反対派は簡単には矛を収めないだろう。推進派でさえ「交渉に参加しても、途中で離脱できる」などと弱腰のことを言い始める者たちがいて、混乱が長引く様相を見せている。だが、作家の落合信彦氏は、日本はTPPに参加しなくてはならないと強く信じているという。以下、落合氏の指摘である。

* * *
マスコミの報道を見ていると、「農業関係者にはマイナス」で「工業関係者にはプラス」といった対立構図で説明しているものが多い。しかし、そのような理解では、今回の対立の「本質」を見誤る。

では、TPPをめぐる対立の本質とは何なのか。

わかりやすく言えば、TPPに反対しているのは、本当の競争に晒されると、都合の悪い者たちである。つまり、「現状の既得権にしがみついている者たち」に他ならない。逆に言えば、「これから競争の中で好機を見出していこうとしている挑戦者たち」にとっては、TPPは非常に魅力的なチャンスになる。

例えば、医師や看護師、弁護士などの資格の相互承認について話題になっていて、医師会などはTPP反対を表明している。少子高齢化がこれからますます進み、医師も看護師も既に人手不足が叫ばれているというのに、なぜ外国人資格者の流入を防ごうとするのか、まったく理解できない。

しかし、それもこう考えればわかりやすい。

反対しているのは、既に資格を持っていて、日本国内で仕事を得ている者たちだ。彼らは競争が生まれれば、自分の職場を失うことになるかもしれない。

逆に、これから勉強して資格を取ろうとしている、若者たちの立場になってこの問題を考えたらどうなるか。

彼らは資格の勉強に加え、英語さえ習得すれば、アメリカやオーストラリアといった場所で活躍するチャンスを得やすくなる。TPP参加によって資格の相互承認が行なわれることは、まだ選挙権すら持たない未来の医師や弁護士たちにとってはプラスになる。もちろん、彼らが強いチャレンジャー精神を持っていることが絶対条件になるが、それは他のジャンルのビジネスでも同じだ。

私は、この構図を理解した若者たちにTPP参加を求める叫びをあげてもらいたいと思っている。

既得権にしがみつくロビー団体の圧力など吹き飛ばすような若者たちのパワーこそ、閉塞感が溢れるこの国には必要なのだ。格差是正を求めるデモ行進などをするよりも、よっぽど生産的な結果をもたらすはずだ。

TPPに参加すればアメリカがイニシアティヴを握り、全てアメリカの考えが通る、と言う連中も多い。医療システムもアメリカ式になってしまうなどと言って、日本人にパニックを起こそうとしている。それが本当なら、なぜオーストラリアやニュージーランドなど、アメリカの他に8か国が参加しているのか。

彼らはアメリカのやり方や条件を鵜呑みにするようなバカではない。不安を煽るのもいい加減にしてもらいたい。

若者たちよ、決して競争を恐れてはならない。健全な競争は、ダイナミックに成長する社会につながる。

※SAPIO2011年12月7日号

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