国内

消費税増税 総理の決意固く年内にもまとまると財務官僚語る

ジャーナリスト・武冨薫氏の司会&レポートによる本誌伝統企画「覆面官僚座談会」。呼びかけに応えた官僚は財務省中堅官僚のA氏、経産省中堅のB氏、総務省ベテランのC氏、農水省若手のD氏だ。今回は野田政権での増税論議の背景を討論した。

* * *
――財務省が野田首相に囁いた最悪の国民背信が消費税増税だ。

財務A:総理の決意は固い。藤井裕久税調会長も、「除夜の鐘を聞く頃にはまとめる」と、年越し覚悟で党内の説得に自信を見せている。この点では、彼らも腹をくくっている。

経産B:しかし、彼らにできるかな。藤井さんは鳩山内閣の財務相当時、ガソリン暫定税率の廃止問題(※)で党内を説得できず、最後は小沢一郎幹事長(当時)の「鶴の一声」に頼った。

財務A 自民党も最後は協力するから大丈夫だ。

総務C:そこが危ない。総理も官僚も国会しか見ていないと、国民の視線の厳しさを感じられなくなる。

――Cさんは、座談会の冒頭で「財務省の奥の院」という言い方をしていた。その真意は?

総務C:税制改革で何度も苦労した財務省の有力OBは、野田政権が「財務省の傀儡(かいらい)」とか、(野田政権を陰で操っているのは財務省の勝栄二郎事務次官との噂から)「勝首相」とかマスコミで呼ばれ、国民に野田政権を動かしているのは財務省だと思われていることを憂慮しているんです。

農水D:事実は、どじょうが泥に潜るから、勝次官が目立ってしまうんでしょうけどね。

総務C:いや、消費税に突き進んでいるのは勝さんというより、次の次、その先の次官をめざして成果をあげたい財務省中枢を担う官僚たちだ。彼らは消費税法案と他の重要法案を抱き合わせにして、それこそ成立しないと国民生活に支障が出るところまで野田総理や与党を追い込み、最後は自民党との話し合い解散を条件に法案を成立させることまで考えている。

そこまで力ずくでやって、もし野田政権が行き詰まって倒れたら国民はどう見るだろうか。

経産B:確実に財務省、霞が関に怒りが向けられる。

総務C:中曽根総理が売上税に取り組んだのは、衆参同日選で大勝して政権は安定し、5年の長期政権の実績があった。だから導入を断念した時、国民の批判を浴びながらも、政治の責任で収拾することができた。政治の統治能力が健全に機能していたからだ。しかし、野田政権に国民の不満を受け止めることは無理だ。

経産B:政治が混乱し、怒りが官僚に向けられた時、どんな事態が起きるか、霞が関では知られた「伝説」がありますからね。細川連立政権が国民福祉税に失敗して短命に終わった後、政権に復帰した自民党は、憎き“小沢政権”に協力した霞が関に報復した。大蔵省の官官接待汚職、ノーパンしゃぶしゃぶ醜聞が吹き荒れ、結果的に小沢さんの右腕だった斎藤次郎・次官の腹心たちが次々と退官させられた。さらに大蔵省は金融庁を分離され、「律令制以来、1000年以上の歴史を持つ」と誇っていた大蔵省の名前まで奪われて財務省に格下げされた。

総務C:Aさんたちはそれをまた繰り返すの? 勝次官ら首脳部にはOBのお歴々から、「野田政権に深入りせずに撤退を考えておけ」とサインが出ているはずですよ。

――消費税増税は断念?

財務A:それはできない。

農水D:小さな変化はあります。財務省があれほど批判を浴びても「凍結」にこだわっていた朝霞の公務員宿舎建設を「中止」することを容認したのも、国民の風当たりを本気で心配している現われでしょう。

※ガソリン暫定税率/ガソリン税に臨時に加算されている税金。1リットルあたり25.1円。民主党は前回総選挙で暫定税率廃止による値下げを公約したが、政権交代後の2009年末の予算編成で財源不足から廃止問題が党内の争点となった。当時の小沢一郎・幹事長は、「廃止しない」方針を決め、かわりに小売価格が高騰して1リットル60円を超えた場合は、暫定税率を停止して価格を引き下げる「トリガー条項」が導入された。ただし、現在は東日本大震災で発動停止中。

※週刊ポスト2011年12月9日号

関連記事

トピックス

茨城県水戸市のアパートでネイリストの小松本遥さん(31)が殺害された事件で知人の男が逮捕された
《水戸市ネイリスト刺殺》「ぞろぞろ警察がきて朝から晩まで…」元交際相手の大内拓実容疑者(28)“逮捕前夜” 近隣住民の知人は「ヤンチャな子が集まってた」と証言
NEWSポストセブン
フリースタイルスキー界のスター、アイリーン・グー選手(時事通信フォト)
〈完璧すぎる…〉雪の女王が「ビキニ一枚写真投稿」で話題に 22歳の谷愛凌選手、ミラノ冬季五輪へ スキー×学業×モデル“三刀流”の現在地
NEWSポストセブン
《解散強行の波紋》高市首相、大学受験シーズンの選挙でタイミングは「最悪」 支持率高い10代の票は望めずか
《解散強行の波紋》高市首相、大学受験シーズンの選挙でタイミングは「最悪」 支持率高い10代の票は望めずか
NEWSポストセブン
歌舞伎役者・中村鶴松(本名・清水大希)容疑者
《歌舞伎・中村鶴松が泥酔トイレ蹴りで逮捕》「うちじゃないです」問題起きたケバブ店も口をつぐんで…関係者が明かす“中村屋と浅草”ならではの事情
NEWSポストセブン
ブルックリン・ベッカムと、妻のニコラ・ペルツ(Instagramより)
《ベッカム家に泥沼お家騒動》長男ブルックリンが父母に絶縁宣言「一生忘れられない屈辱的な記憶」は結婚式で実母ヴィクトリアとの“強制ファーストダンス”、新婦は号泣
NEWSポストセブン
初場所初日を迎え、あいさつする日本相撲協会の八角理事長(2026年1月11日、時事通信フォト)
土俵が大荒れのなか相撲協会理事選は「無投票」へ 最大派閥・出羽海一門で元横綱・元大関が多数いるなか「最後のひとり」が元小結の尾上親方に決まった理由
NEWSポストセブン
。一般人を巻き込んだ過激な企画で知られるイギリス出身のインフルエンサーのボニー・ブルー(Instagramより)
「行為を終える前に準備」「ゴー、ゴー、ゴーです」金髪美女インフルエンサー(26)“12時間で1000人以上”を記録した“超スピード勝負な乱倫パーティー”の実態
NEWSポストセブン
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《5か月ぶりの表舞台直前で》米倉涼子、ギリギリまで調整も…主演映画の試写会前日に“書類送検”報道 出席が見送られていた
NEWSポストセブン
天皇皇后、愛子さま
《溜席の着物美人が2日連続で初場所に登場》6年ぶりの天覧相撲に感じた厳粛さを語る 力士のみならず観客も集中し、「弓取り式が終わるまで帰る人がいなかった」
NEWSポストセブン
肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
《キー局に就職した有名アナも》久米宏さんに憧れて男性アナウンサーを目指した人たち 爆笑問題・田中はTBSラジオでのバイト時代に「久米宏さんになりたかった」
NEWSポストセブン
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《ゲッソリ痩せた姿で取調室に通う日々》米倉涼子が麻薬取締法違反で書類送検、昨年末に“捜査終了”の匂わせ 元日にはファンに「ありがとう」と発信
NEWSポストセブン
 相撲観戦のため、国技館へ訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2026年1月18日、撮影/JMPA)
「美しすぎて語彙力消失した」6年ぶりの天覧相撲 雅子さまは薄紫の着物、愛子さまは桜色の振袖姿でご観戦
NEWSポストセブン