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退職金での運用「全体資金の3割程度に抑えるべき」と専門家

全企業平均で約1800万円といわれる退職金。これだけのまとまったお金が手に入ったとき、どう使うべきだろうか。「家計の見直し相談センター」の藤川太氏が、賢い退職金の使い途を解説する。

* * *
多くの人にとって退職金は、今まで見たことのない金額をまとめて手にする機会となる。大きなお金が口座に振り込まれると、ついつい気が緩むどころか、どう使っていいのか、その支出ペースすらわからなくなってしまうケースが散見される。

退職金を手にして、まず考えなければならないのは老後資金の確保である。

確かに退職金を住宅ローンの一括返済に回すという手立ては有効で、定年後のキャッシュフローは楽になるだろう。ただし、注意が必要だ。金利が2%を上回るような住宅ローンを組んでいるのであれば、さっさと返済してしまった方が金利負担が軽減される。

しかし、金利の低い住宅ローンまで無理して一括返済してしまったために老後資金が枯渇し、何か高額商品を買おうとしてより高い金利で新たにローンを組んでしまっては目も当てられない。ならば一括返済などせず、手元に資金を残しておいた方がマシだ。

あるいは、銀行の支店から「いかがですか、この機会に運用を考えてみては?」といったセールスがくる。続けて「今、流行の毎月分配型投信なら年金のように分配金が受け取れます」などと囁かれると、その中身もよく把握しないまま、資金を投じてしまう人も少なくない。

確かに分配金は魅力的だが、その原資はどこからきているのか。運用益から出ているならまだしも、自らの原資を食いつぶすだけのタコ足配当になっている可能性も否定はできない。そうなれば原資は目減りしていく一方だし、運用益を再投資することで得られる複利効果も期待できなくなるのだ。

何よりも世界的に運用環境が悪化している現時点では、退職金はできるだけ減らさないことが得策といえる。

それでも今後のインフレリスクを考えれば、ただ現金として持っているだけでは、増えないどころか、将来その価値が目減りする可能性がある。そこで一部は資産運用に振り向けておきたいが、その比率は多くても全体の3割程度に抑えるべきだろう。

せっかくまとまったお金を手にするのだから、今まで以上に賢い使い途を選びたいものだ。

※『サラリーマンのための安心税金読本』(小学館)より

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