国内

日本は非効率なワンボックスカーが道に溢れる世界に類ない国

日本の自動車メーカーが再びスポーツカーに力を入れている。はたして日本の消費者の車選びはどうなるのか? 大前研一氏は、そもそも日本の自動車市場は、世界で類を見ない状況になっていると考えている。以下は、大前氏の解説だ。

* * *
東京モーターショーでトヨタが発表した、今春発売予定の小型スポーツカー「86」のような“スポーティーカー”は、今は買う人が少ない。

このセグメントは、かつては日産「シルビア」やホンダ「インテグラ」などが、スタイルや走りの良さに憧れた若い男たちに売れて一世を風靡したが、その人気は1980年代に失われてしまった。なぜなら、それ以降の日本は一家に1台のファミリーカー時代になり、車を買う時の意思決定者が複数になったからである。

つまり、車種は普段使う息子や娘が選ぶが、購入資金を出す父親も時々運転するという、先進国でも日本だけの現象が起きたのである。

その最初の10年ぐらいは、未舗装路のない日本では全く不要で街乗りに不向きな4輪駆動のSUV(スポーツ用多目的車)が売れていた。合理的に見ると最も理解に苦しむ車種選びで、日本人は判断を誤っていたとしか思えないが、意思決定者が複数だとそういう結果になってしまうのだ。

その行き着いた先がワンボックスカーである。家族で旅行や帰省をする時に5人乗りのセダンでは少々窮屈ということで、ゴールデンウィークや年末年始など年に数回の家族全員利用に合わせて7~8人乗りのワンボックスカーを選択し、大半の時は1人で乗っているという、これまた非合理的な判断をしているわけだ。

かくして日本の道路は、不格好で非経済的なワンボックスカーがあふれるという世界でも類を見ない珍奇な状況になったのである。

そして今は軽自動車ブームである。家族それぞれが通勤や買い物などの日常利用に合わせて最適化すると、みんな維持費が安くて駐車スペースが小さくてすむ軽自動車を選ぶ。

だから車が生活必需品の地方では、家族全員が軽自動車を保有する時代になり、一家に軽4台というケースも珍しくなくなっているのだ。

※週刊ポスト2012年2月3日号

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン