国内

公務員の年金優遇策 「高尚で大変な仕事だから」の意識か

 年金官僚や新聞・テレビは第3号被保険者(サラリーマンの妻)が年金を受け取ることを「負担に応じて給付を受ける社会保険の原則に反して不公平」と批判する。
 
 だがちょっと待て。
 
 では、サラリーマンが重い「負担」をしているのに、公務員が高い「給付」を受けることは「原則に反して不公平」ではないのか。

 官僚が年金について「不公平」を口にするとは、天に唾を吐く行為である。彼らは様々な名目をつけて、自分たちの年金だけ特権を守ってきた。最大の特権が「職域加算制度」だ。

 これはサラリーマンより公務員の年金支給額が高いことを隠すために作られた制度である。1986年の保険制度改正で、公務員の共済年金とサラリーマンの厚生年金の基礎年金部分が統合された際、2階建ての厚生年金に対し、共済年金は1、2階部分を同じように見せながら「職域加算」という3階部分を設けて、月額2万~3万円加算されるようにした。この新制度によって、公務員の年金は、保険料(掛け金)はサラリーマンより安いのに、給付額ははるかに高い仕組みになったのである。

「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏の試算によれば、生涯の平均年収480万円のサラリーマンと公務員を比較した場合、40年間の払込総額は厚生年金の約1757万円に対し、共済年金は約1727万円と30万円安い。ところが、2人とも80歳まで生きたとすれば、年金受給総額(満額)はサラリーマンの約2964万円に対し、公務員は約3300万円と336万円も多いのである。

「国は年金財政が厳しいといって、厚生年金の受給額を決める『給付乗率』を引き下げている。その一方で、職域加算の給付乗率は20年かけて0.05%から0.15%の3倍に引き上げられた。

 公務員の年金の詳細はベールに包まれており、われわれ専門家でもわかりにくいから、ほとんどの国民は気付かない。メディアもわかっていない。だから、年金官僚はお手盛りのやり放題なのです」(北村氏)

 職域加算が支払われる理由を聞けば、開いた口が塞がらない。なんと公務員には法律で「守秘義務」が課せられているからだというのである。確かに、自分たちの年金特権については口を噤んでいるのだから、その義務の一部は果たしているかもしれないが、要するに“お上の仕事は、下々の者より高尚で大変なのだから、年金も高くて当たり前”という厚顔ぶりなのだ。

 公務員の年金優遇策を列記すればキリがないが、「転給制度」という特権は無視して先に進むわけにいかない。サラリーマンの遺族厚生年金の場合、妻が亡くなったり、子供が18歳になったりすれば支給が打ち切られる。ところが、公務員の遺族共済年金だけは、妻が亡くなったら子供、あるいは父母へと受給権を転々と引き渡すことができるのである。自分たちだけの特権階級を作り上げようとする、おぞましい選民思想である。

※週刊ポスト2012年3月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン