国内

東電法人営業社員 上層部はさっさと責任取り辞めてもらいたい

 社員数3万8000人、売上高5兆円。巨大企業・東京電力の社員たちは、あの日を境に、「電気の供給」という仕事に加え、「原発事故の処理」「巨額の賠償」という大きな責任を背負った。東電社員はこの1年、何を見て、何をして、何を感じてきたのか。そもそもあの悲劇は、なぜ起きたと考えているのか、都内支社で法人営業グループに在籍する40代社員に話を聞いた。

 * * *
 正直言って、事故前までは楽をしていたんだと思います。法人営業は、顧客の企業を訪ねて、「オール電化にすればこれだけエネルギーコストが安くなります」と提案する仕事。でも、数値目標はあってないようなものでした。

 地震当日は、職場で書類をまとめていました。直後は原発をあんな津波が襲うなんて思い至らなかったのですが、ひとつ、忘れられないことがあります。

 我々は、パソコンで「電力需要曲線」が見られます。電力の需要を示すグラフなのですが、それが地震直後の14時48分ごろから、まるで滝のようにストンと落ちていたのです。ざっと、35%くらいの電力需要が消えてなくなっていました。簡単に言えば、それだけ電線が途中で切れたり、建物がダメージを受けるなどして、電力需要がなくなったことを示していました。

 私たちは、電気の消費は“人類の営み”そのものだと教わってきています。それが、3割減った。ビルや家屋がどれほど倒壊したのか……と想像して、鳥肌が立ちました。

 私はその後、別の支社の法人営業へと応援に行って、計画停電の説明に携わりました。他の部署の社員は会社に何日も泊まり込み、スーツや作業着がボロボロになっていましたが、私が向き合うのはあくまで法人の顧客で、3.11以前と変わりませんでしたから、恵まれていたと思います。

 後輩に、個人顧客への営業を担当していた男がいますが、彼は4月に福島の補償相談センターに異動しました。仮払いさえも始まっておらず「怒鳴られるばかりの毎日です」と嘆いていました。

 事故の原因については、社員個人個人で思いはあるでしょう。ただ、社内では口が裂けても言えませんが、私は原子力部門の怠慢、驕りだったと思います。外部から見れば、「安全神話をいまだに信じているのは東電だけ」と見えるかもしれませんが、実際は「東電の上層部と原子力部門だけ」じゃないかと思います。

 安定供給という面からは原子力にメリットがありますが、もう世論は安易な再稼働を許さないでしょう。その現実が、上層部には見えていないですね。営業の社員としては、さっさと責任をとって上層部に辞めてもらって、原発も徐々になくす方向を打ち出すべきだと思います。

※SAPIO2012年3月14日号

関連キーワード

トピックス

イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
マンションの周囲や敷地内にスマホを見ながら立っている女性が増えた(写真提供/イメージマート)
《高級タワマンがパパ活の現場に》元住民が嘆きの告発 周辺や敷地内に露出多めの女性が増え、スマホを片手に…居住者用ラウンジでデート、共用スペースでどんちゃん騒ぎも
NEWSポストセブン
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
デビュー25周年を迎えた後藤真希
デビュー25周年の後藤真希 「なんだか“作ったもの”に感じてしまった」とモー娘。時代の葛藤明かす きゃんちゅー、AKBとのコラボで感じた“意識の変化”も
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
亡くなった辻上里菜さん(写真/里菜さんの母親提供)
《22歳シングルマザー「ゴルフクラブ殴打殺人事件」に新証言》裁判で認められた被告の「女性と別の男の2人の脅されていた」の主張に、当事者である“別の男”が反論 「彼女が殺されたことも知らなかった」と手紙に綴る
NEWSポストセブン
ものづくりの現場がやっぱり好きだと菊川怜は言う
《15年ぶりに映画出演》菊川怜インタビュー 三児の子育てを中心とした生活の中、肉体的にハードでも「これまでのイメージを覆すような役にも挑戦していきたい」と意気込み
週刊ポスト
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン