国内

AIJ問題 投資顧問会社検査は20年に一度で事実上ないと同じ

 運用年金資産約2000億円を消失させたAIJは“自己申告”によって、最も人気の高い投資顧問会社の一つに挙げられていた。今回明らかになった最大の問題点は、厚生年金基金(企業年金+厚生年金の一部)を運用する投資顧問会社への規制や監視体制がないことだ、と大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。
 
 * * *
 AIJ問題の真相とは何か? 考えられることは二つしかない。一つは、年金運用を入り口にした詐欺行為である。つまり、もともと運用する気がなく、集めたカネは海外に持っていって上層部が自分たちの懐に入れた。もう一つは、まともに運用するつもりだったが、運用能力がなくて海外の詐欺に引っかかった。このどちらかであることは間違いないだろう。

 ただし、今回明らかになった最大の問題点は、厚生年金基金(企業年金+厚生年金の一部)を運用する投資顧問会社への規制や監視体制がないことだ。なにしろAIJは“自己申告”によって、最も人気の高い投資顧問会社の一つに挙げられていたのである。

 かつて年金資産の運用は、元本割れリスクのある資産への過剰な投資を抑えるため、「5・3・3・2」規制によって資産配分が制限されていた。国債などの元本割れのない安全性の高い資産を5割以上組み入れ、株式を3割以下、外貨建て資産を3割以下、不動産を2割以下に抑えるという規制である。だが、それは1997年に完全撤廃された。

 その一方では、信託銀行と生命保険会社に限られていた厚生年金基金の資産運用が、1990年から新たに投資顧問会社にも認められた。当初は、運用できる資産に制限があったが、完全自由化された1999年以降、投資顧問会社の受託シェアは急速に拡大してきた。

 ところが、証券取引等監視委員会が約250社ある投資顧問会社を検査するのは20年に1回くらいといわれ、実際、AIJは今の社名になった2004年から一度も検査を受けていなかった。金融庁や厚生労働省のチェックも事実上、ないに等しい。

 要するに、厚労省は年金資産の「5・3・3・2」規制を撤廃し、投資顧問会社に厚生年金基金の運用を認めておきながら、年金資産を安定運用するために必要な仕組みを作らず、投資顧問会社を野放しにしてきたのである。

※週刊ポスト2012年4月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

(時事通信フォト)
《佳子さま盗撮騒動その後》宮内庁は「現時点で対応は考えておりません」…打つ手なし状態、カレンダー発売にも見える佳子さまの“絶大な人気ぶり”
NEWSポストセブン
2025年7月場所
名古屋場所「溜席の着物美人」がピンクワンピースで登場 「暑いですから…」「新会場はクーラーがよく効いている」 千秋楽は「ブルーの着物で観戦予定」と明かす
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
【衝撃の証拠写真】「DVを受けて体じゅうにアザ」「首に赤い締め跡」岡崎彩咲陽さんが白井秀征被告から受けていた“執拗な暴力”、「警察に殺されたも同然」と署名活動も《川崎・ストーカー殺人事件》
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《“ドバイ案件”疑惑のウクライナ美女》参加モデルがメディアに証言した“衝撃のパーティー内容”「頭皮を剥がされた」「パスポートを奪われ逃げ場がなく」
NEWSポストセブン
今はデジタルで描く漫画家も多くなった(イメージ)
《漫画家・三田紀房の告白》「カネが欲しい! だから僕は漫画を描いた」父親の借金1億円、来る日も来る日も借金を返すだけの地獄の先に掴んだもの
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
【伊東市・田久保市長が学歴詐称疑惑に “抗戦のかまえ” 】〈お遊びで卒業証書を作ってやった〉新たな告発を受け「除籍に関する事項を正式に調べる」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
《不動産投資会社レーサム元会長・注目の裁判始まる》違法薬物使用は「大きなストレスで…」と反省も女性に対する不同意性交致傷容疑は「やっていない」
NEWSポストセブン
女優・福田沙紀さんにデビューから現在のワークスタイルについてインタビュー
《いじめっ子役演じてブログに“私”を責める書き込み》女優・福田沙紀が明かしたトラウマ、誹謗中傷に強がった過去も「16歳の私は受け止められなかった」
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン