ビジネス

二者択一の為替商品を「最も効率の良いギャンブル」と専門家

 いま注目を集めている金融商品が「バイナリーオプション」。FX(外国為替証拠金取引)と同じく為替に投資するものだが、いったいどんなものなのか? 為替アナリストの陳満咲杜氏が解説する。

 * * *
 2011年来、さまざまなFX会社が参入し、個人投資家の注目度が上がっている『バイナリーオプション』。その理由は、取引内容が単純で、分かりやすいということに尽きる。

 提供するFX会社によって商品内容に違いはあるが、基本的には、一定時間後の為替相場で、選んだ通貨が上がっているのか、下がっているのかを予想するだけ。投資に必要な資金は50円、100円といったワンコインからOKで、予想が的中すれば投資金額が数倍になって戻ってくるし(倍率は会社によって異なる)、外れれば投資金額=損失額になるという、極めてシンプルなものだ。

 もともとオプションは、金融派生商品の一種で、プロの機関投資家しか取引しないような複雑な金融商品である。しかし、資産運用の本として世界的なベストセラーとなった『金持ち父さん貧乏父さん』の著書ロバート・キヨサキ氏は、「現在の金融市場のように変動の激しい時代では、従来の投資セオリーである“バイ&ホールド”は通用しない」という理由から、オプションによる運用の必要性を説いており、世界的に注目度は上昇しているといえる。

 国内のFX会社が取り扱うバイナリーオプションは、キヨサキ氏が注目しているオプションとは中身がかなり違っているが、投資期間が決められている点や、リスクやリターンを限定することができる点は変わらない。よりゲーム性が強調されているところが大きな特徴だ。

 そもそも、「バイナリー」(Binary)とは「二進法」という意味。二進法には「0」か「1」しかないことから、バイナリーオプションには「二者択一」という意味が込められている。つまり、円相場なら、円高か円安かを予想するだけなのだ。

 バイナリーオプションはFXで必要な証拠金は必要なく、投資金額も小さくて済む。そして、注文後、決められた時間が来ると取引が終了するため、FXのように反対売買をする必要がない。つまり、利益確定や損切りは自動的に行なわれるので、利益確定や損切りが苦手な人でも利益を出せる可能性が高くなる。

 また、たとえ1銭でも通貨が予想方向に動けば、投資金額が2倍になることもあり、FXより投資効率は高いといえるだろう。

 一方、予想が外れても、投資金額=損失となるためリスクは限定される。現在、FXのレバレッジは最高で25倍。資金を倍にするには、相場が予想通りに大きく動かないと難しい。バイナリーオプションが人気を集めている背景には、こうした要因もあるのだろう。
 
 FXと比べたデメリットとしては、相場が予想とは反対方向に動いたときにすぐに損切りをして損失を最小に抑える、あるいは、しばらくホールドして利益を伸ばす、といったポジションのコントロールができないことが挙げられる。

 バイナリーオプションは二者択一で勝負が決まるため、一部ではそのギャンブル性の高さをネガティブにとらえる向きもある。しかし、ギャンブルと割り切るなら、最も効率の良いギャンブルといえそうだ。競馬や競輪などの公営ギャンブルの控除率(手数料の割合)は20%台、宝くじにいたっては55%。これに対してバイナリーオプションでFX会社が得る手数料は数パーセントに過ぎないはずだ。

 為替相場の知識がなく、ギャンブルとしてやっても50%近い勝率が見込める。それなら、知識を身に付けてトライすれば勝率は50%以上になり、資産運用のツールとして十分活用することができるだろう。

※マネーポスト2012年春号

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン