国内

地震学権威「最大津波34m」発表は想定外出さないためと苦言

「最大津波34メートルを予測」「10県153市町村で最大震度7も」……

 先月31日の「南海トラフの巨大地震」に関する検討会(内閣府)の発表以降、仰々しい見出しが新聞を飾る。南海トラフとは西日本の太平洋沖に延びる海溝だ。この海溝に地震が発生すれば震源域を接する東海地震、東南海地震、南海地震が誘発され、M9超の大震災が発生する、と検討会は警鐘を鳴らしたのだ。

 だが、東日本大震災から1年後の発表は、人々の混乱を呼んだ。西日本沿岸では「高台へ庁舎の移転を検討する」(和歌山県串本町)との自治体まで現われている。

『日本人は知らない「地震予知」の正体』の著者で、地震学の権威であるロバート・ゲラー東大大学院教授(固体地球科学)が苦言を呈する。「“34メートルの大津波”という言葉だけが一人歩きしている。新聞は報告書をしっかりと見て報道すべきです」

 実は、報告書には「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」が起きた場合の震災想定であることが明記されている。つまり、各地震の最大値をつなぎ合わせた被害であるということだ。さらに「発生頻度はきわめて低い」と「その発生時期の予測を行なうことは、不可能に近い」との断わりもある。過去を遡っても、日本列島で同規模の震災は確認されていない。

 事務局でさえこれらの被害が一度に起きることは「実際にはあり得ない」との談話を出している。

 思い起こされるのが、今年1月の“ヤマ勘予測”騒動である。

 東大地震研が出した「首都圏直下型地震4年以内発生確率70%」という研究データをもとにメディアが狂騒した挙げ句、地震研が〈正確でない表現や記述不足がありました〉〈地震研究所の見解となるわけではまったくありません〉と否定。当の研究者が「僕のヤマ勘」と談話を出す不可解な幕引きを迎えた。

 結局、それら地震報道は何ら検証されることなく、「南海トラフの巨大地震」に関する報道も大々的に行なわれている。

 ゲラー教授は、メディアだけでなく地震学界の体質にも批判を加えた。

「今回の発表は、東日本大震災を予測できなかった地震学界の3.11ショックが背景にあります。“想定外”を出さないように、今回は、最悪のケースということに、あまりにも重みを置きすぎ、現実的なリスクには一切触れていない。検討会のメンバーは、3.11前と変わらない学者で構成されている。科学者としての責任を取らないまま、新たに無責任な発言を続けているんです」

※週刊ポスト2012年4月20日号

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