国際情報

暗殺、逮捕、自殺、不幸な末路を辿る韓国大統領の選挙が過熱

 朴正熙(パクチョンヒ)……暗殺。全斗煥(チョンドゥファン)・盧泰愚(ノテウ)……逮捕。盧武鉉(ノムヒョン)……自殺。政権末期や退陣後、かくも不幸な末路を辿るのが韓国の大統領だ。李明博(イミョンバク)にも側近の金銭スキャンダルが噴出し始めている。まさに命を懸けた戦い。過熱する韓国大統領選の現在を、産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が報告する。

 * * *
 韓国での権力闘争が熾烈化している。国会議員選挙(総選挙)と大統領選が同じ年に重なるのは20年ぶりだが、大統領選まであと半年。権力は保守に留まるのか、あるいは左派が奪還するのか? それとも地域的に嶺南(慶尚道)が権力を維持するのか、あるいは湖南(全羅道)が再度、手にするのか? いやもう1つ、40代以下が権力に接近するのか、それとも50代以上が権力の行方を左右するのか?

 前哨戦の総選挙(4月11日)では、保守が崖っぷちで辛うじて踏みとどまった。議席数では保守のセヌリ党が過半数を維持したものの、得票率では左派の民主党・進歩党が逆にわずかに上回っている。現状は左右が五分と五分。総選挙の結果では大統領選の行方はまったく読めない。

 現在の李明博政権は10年ぶりの保守による政権奪還だった。国民は“経済”という新しい時代精神から彼を選んだが、その結果には満足していないようだ。年末の“次”をめぐる権力闘争を占うためには李明博政権の総括が必要だ。

 まず李政権は地域的に嶺南派であり、財閥企業経営者出身のイメージもあって“既得権勢力”と見られてきた。

 韓国では「権力とは人事が万事」という。李政権の権力つまり人脈源は嶺南・高麗大・教会といわれた。世代イメージは当然、50代以上の既成世代。そして北朝鮮問題では南北首脳会談開催に恋々とせず、非妥協的だった。

 しかし“次”に対し国民は李政権との差別化を期待する。すでに側近の汚職が表面化しているが、今回も新権力は旧権力を血祭りにあげる?

 韓国政治をめぐっては「陰の主役はいつも北」だ。北は総選挙と同様、大統領選でも民主党・進歩党提携による親北・左翼政権再現に全力を挙げる。金正恩体制の安定にはぜひそれが欲しい。

 そのためには、既成のモノを破壊し「新しい何か」をもたらす新世代のシンボル「安哲秀カード」を取り込まなければならない。

 安哲秀は“韓国のビル・ゲイツ”と呼ばれ政治的には中道だが、過剰な現状否定論は左翼に利用されやすい。韓国の権力闘争にはこれまでにもまして“北の影”が影響する。朴槿恵をはじめ保守勢力は厳しい二正面作戦を迫られる。

※SAPIO2012年6月6日号

トピックス

メキシコのシェインバウム大統領(左)とトランプ米大統領(AFP=時事)
《ゾンビタウンも》トランプ大統領が関税措置の理由に挙げた「フェンタニル」問題 日本にとっても他人事ではない背景
NEWSポストセブン
水原被告がついた「取り返しのつかない嘘」とは
水原一平被告がついた「取り返しのつかない嘘」に検察官が激怒 嘘の影響で“不名誉な大谷翔平コラ画像”が20ドルで販売
NEWSポストセブン
折田氏が捜査に対し十分な対応をしなかったため、県警と神戸地検は”強制捜査”に踏み切った
《「merchu」に強制捜査》注目される斎藤元彦知事との“大きな乖離”と、折田楓社長(33) の“SNS運用プロ” の実績 5年連続コンペ勝ち抜き、約1305万円で単独落札も
NEWSポストセブン
ギリギリな服装で話題のビアンカ・センソリ(インスタグラムより)
《露出強要説が浮上》カニエ・ウェストの17歳年下妻がまとった“透けドレス”は「夫の命令」か「本人の意思」か
NEWSポストセブン
四川省成都市のPR動画に女性社長役で出演した福原愛(写真/AFLO)
福原愛が中国で“女優デビュー”、四川省の“市のPR動画”に出演 バッチリメイクでハイヒールを履きこなす女社長を“快演”、自虐的な演出も
女性セブン
ベルギー・サッカー元代表でコカインの密輸に関与した疑いで逮捕されたラジャ・ナインゴラン(Xより)
《欧州サッカー界のトラブル男》首に赤い薔薇、右手に謎の日本語…全身タトゥーの“赤い悪童”(36)がコカイン密輸疑惑で逮捕
NEWSポストセブン
車に乗り込む織田裕二(2025年1月)
《フジテレビ騒動の影響》織田裕二主演映画『踊る捜査線 N.E.W.』、主要キャストに出演を打診できないままピンチの状態 深津絵里の出演はあるのか
女性セブン
大木容疑者(共同通信)。頭部が遺棄された廃マンション
《東大阪・バラバラ遺体事件》「部屋前のインターホンが深夜に鳴った。それも何度も」女性住民が語った“恐怖のピンポン”「住民を無差別に狙っていたのか…」
NEWSポストセブン
『東京2025世界陸上』のスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
「くすぶって終わりたくない…」 織田裕二がバラエティ出演を辞さなくなった切実な背景《『世界陸上』に緊急復帰の理由》
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「従業員の人が驚くといけないから…」田村瑠奈被告が母・浩子被告に告げた「殺害現場のホテルをキレイにした理由」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「1000人以上の男性と関係を持った」金髪美人インフルエンサー(25)が“乱倫パーティー動画”削除の大ピンチ《世界に波及する“奔放な女”の影響力》
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《過激ファッション》カニエ・ウェストの17歳年下妻、丸出しドレスで『グラミー賞』授賞式に予告なく登場「公然わいせつ」「レッドカーペットから追放すべき」と炎上
NEWSポストセブン