国際情報

韓国最高裁徴用工に補償 日本企業から金取れるで訴訟激増か

 国際法的には解決している問題を、国内裁判で勝手に裁き直す――法治国家とは思えないお粗末な法廷が隣国でまかり通っている。日韓に横たわる大問題を、産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が緊急レポートする。

 * * *
 韓国でまた、日本に対する過去の“補償要求”が再燃している。李明博大統領が「日本は加害者として被害者に誠意ある措置を」と改めて謝罪と補償を求めている従軍慰安婦問題に次いで、今度は戦時労働者徴用問題が話題となっているのだ。

 5月24日、韓国の最高裁は、戦時中に韓国人(朝鮮人)を労働者として使った日本企業に対して、元労働者たちが未払い賃金などを個人補償要求することを認める判決を出した。

 韓国人労働者は、戦時中の国民総動員下で日本に渡航・就労し“徴用工”といわれた。敗戦、そして帰国などの混乱の中で、戦後は受け取っていなかった賃金などの支払いを求め、日本や韓国で訴訟を繰り返してきた。

 過去、日韓の裁判所は「補償問題は国交正常化の際の協定で終わっている」とし、個人の補償要求は認めなかった。だが今回は、韓国の最高裁が「個人の(日本企業への)補償請求権はある」として補償裁判のやり直しを命じたのだ。

 今後、韓国の下級裁判所が最高裁の判決に従い、「日本企業は補償しろ」と結論づけた場合、日本企業は補償金支払いを迫られる。「応じない場合は、韓国での売り上げ金や投資資金などの資産差し押さえもすべきだ!」と、早くも韓国メディアは煽っている。

 すでに韓国の国会議員や支援団体は、当時、韓国と関係が深かった三菱、三井、住友など旧財閥系をはじめとした約200社の日本企業を「戦犯企業リスト」として挙げ、名指しで非難している。今後はこのなかから次々、訴訟のターゲットが選ばれていくことになる。

 現在は、三菱重工業と新日本製鉄を相手にしたわずか9人の元労働者の訴訟が行なわれているだけだが、今回の最高裁判決を踏まえて、弁護士は新日鉄の元労働者約180人に意思確認し、数か月以内に集団提訴する方針で、三菱重工についても準備中だという。さらに、富山県の機械メーカー・不二越を相手に約20人の元労働者や遺族も韓国で訴訟を起こす構えだ。今後、「日本企業から金が取れる」となると、遺族を含め訴訟はどっと増える。

 訴訟について各企業に話を聞くと、「賠償問題はすでに日韓の請求権協定によって解決済みと当社は主張してきた。韓国内の動きについては認識しているが、具体的な事実関係については確認できていない」(新日鉄)、「集団提訴が起こされるのか、現状では窺い知れない」(三菱重工)、「事実として何も把握していない」(不二越)と、いずれも困惑の様子だった。

 日本政府が2010年にまとめた調査では、未払い徴用工の数は約17万人で、未払い総額は当時の金額で約2億8000万円に上ったという。韓国マスコミによると、うち6万人が存命で、遺族を含む当事者たちの要求は慰謝料などを含む損害賠償だから、貨幣価値を考えるとその賠償額は計り知れないものとなる。日本企業は戦々恐々だろう。

※週刊ポスト2012年6月29日号

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン