ライフ

両眼性無眼球症の娘を持つ母 30回超の手術に「何が正解か…」

倉本美香・著『生まれてくれてありがとう 目と鼻のない娘は14才になりました』

 両眼性無眼球症の娘を持つ母──。ビジネスコンサルティング会社「OFFICE BEAD INC」を主宰し、日系企業や日本人アーティストのアメリカ進出サポートを中心に活動している倉本美香さん(43才)がこのほど『未完の贈り物 「娘には目も鼻もありません」』(産経新聞出版)を上梓した。美香さんが、生まれつき両眼がない娘の千璃ちゃん(9才)の誕生からつけていた日記をもとにまとめた、家族の壮絶な8年間の記録だ。

 一見、ただ閉じているだけのように見える千璃ちゃんのまぶたの奥には、千璃ちゃん自身のお尻の脂肪組織が移植されている。いずれ顔の骨格がある程度定まった時点で義眼をいれるために、眼孔(眼球がはいっている場所)の大きさを保っておかなければならないからだ。

 そして鼻も、生まれたときは中心にある骨が見当たらず、手術で整えた。生後10か月の時に初めて眼の手術を受けて以来、鼻を含め、千璃ちゃんが受けた顔の手術は30回を超える。美香さんは次のように話す。

「千璃は自分の顔を見ることができません。なのに、顔にメスを入れられるなんて…その意味もわからないだろうし、単に痛くて苦しい思いをさせているだけなんじゃないか、親のエゴなのでは…さまざまな葛藤があります。でも、彼女が社会で受け入れられるためには、必要なのではないか…。とはいえ、いつになったら終わるんだろう、費用はどれだけかかるんだろう。そもそも“完成”って何? 千璃の幸せって?とか…何が正解かなんてわかりません。答えを探し続けているという感じです」

 出産翌日、千璃ちゃんはMRI検査を受けた。その結果を、小児科医は淡々と夫婦に告げた。2番目の宣告だった。

「No eyes。お子さんには、普通の眼球がありません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン