国内

暴力団が除染講習会に潜り込み資格取得 儲かる除染作業参入

 大飯原発が再稼働したものの、まだ多くの原発が停止したままだ。しかし、原子力ムラは一向に困らない。なぜなら、原発が停止しても、新たに「除染」利権が誕生したからだ。ジャーナリストの伊藤博敏氏が指摘する。

 * * *
 昨年9月、内閣府は日本原子力研究開発機構に「避難区域等における除染実証業務」を約119億円で丸投げした。同機構は、高速増殖炉もんじゅや青森県六ヶ所村における核融合の研究開発にあたる組織で、「原子力ムラ」の中核と言っていい。発注は、「除染作業に知識と経験がある」という理由からだが、結局、機構もゼネコンを中核とするJVに丸投げ。「除染実証業務」の3地区を受注したのは原子炉建屋などの実績順に、鹿島(24基)、大林(11基)、大成(10基)の3社JVだった。

 こうしたモデル事業での実績をもとに、ゼネコンは環境省発注の警戒区域内などの除染や、指定された104か所の自治体発注の除染も、ほぼ独占的に受注し、“談合”で割り振ることが多い。

 言うまでもないことだが、談合は犯罪である。地検特捜部などが長い歳月をかけて摘発し、ようやく談合組織を壊滅に追い込んだ経緯がある。それが、大震災を機に復活したのだ。実は検察も、「いつまでも非常時ではない!」と、 今年3月頃から摘発を視野に入れた内偵に入っていた。

 そうした捜査当局の意図を察知したかのように、復興庁と国土交通省は、被災地の復興工事でコンストラクション・マネジメント(CM)方式と呼ばれる新たな発注方式の導入を決め、7月から宮城県で始めることになった。

 これまで自治体が、公共工事を調査・設計、工事施工などに分けて発注していたものを、「コンストラクション・マネージャー(CMR)」という建設管理業者に丸投げ。そこが各業者に発注する。「官」がCMRに想定しているのはゼネコン。要はゼネコンへの丸投げであり、現在の「官製談合」の違法を、合法に変えるシステムだ。

 こうして東北では、莫大な除染・復興予算を、ゼネコン、サブコン、土建業者などが、分け合う体制が確立した。

 東北は、不況の続く日本の起爆剤。そのあふれる予算に期待し、蠢き始めた有象無象は少なくない。暴力団もしかり。暴力団系手配業者が原発に作業員を送り込んでいるのは周知の事実だったが、被災して事業を投げ出した土建業者の組合員資格を買い取った暴力団系業者が、談合でやすやすと工事を受注。また、彼らは満員盛況の「除染講習会」に潜り込み、資格を取って除染作業に入り込んでいる。

 憂慮した環境省は、今年3月、福島県警と合同で、除染やがれき処理から暴力団を排除する対策協議会を立ち上げた。彼らの確実な“侵食”を物語るのは、5月に福島第二原発が立地する楢葉町の渡辺征・商工会長が銃刀法違反で逮捕されたことだろう。

 渡辺被告は、商工会長ほか建設業協会会長、漁業協同組合組合長などを務める町の“顔役”だったが、除染・復興利権を手にするようになって、カネ回りが良くなった。1000万円台の車を購入、羽振りがよくなった渡辺被告に群がる海千山千が多くなり、そうした渡辺被告に拳銃を手渡した組織があり、同時に被告の「独占」を快く思わない勢力によって、警察に「刺された」ということのようだ。

※SAPIO2012年8月1・8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン