展示された女性器の石膏模型の数は571人分、今年5月~6月、ロンドンで開かれた展覧会『The Great Wall of Vagina』(直訳すれば「女性器の偉大なる壁」)は大反響を呼び、異例の延長までされた。現地の芸術評論家たちもこぞって高く評価した作品はしかし、いまだ日本公開のメドは立っていない。
女性器をモチーフにした作品は芸術かわいせつか──イギリスをはじめ先進国ではとうに決着しているこの問題が、わが国ではいまだ過去のものではない。『週刊ポスト』は問題提起の意味をこめて、その作品を誌上で掲載した。
日本の識者は、この問題をどう考えるか。写真評論家の飯沢耕太郎氏はこう語る。
「『世界の起源』がパリのオルセー美術館に堂々と展示されていることが、欧米のアートに対する姿勢を示しています。しかし、日本においてはこの作品を展示すること自体が難しい。それは日本では『性器が出ているかどうか』を問題にするからです。
欧米では、子供が見る時や宗教的なタブーへの配慮はするものの、性器が出ていること自体はアーチストが表現として使うかぎり拒否はしません。私は日本も欧米の考え方にならうべきだと思います」
この作品をわいせつと捉えることは「日本の恥」というのは、弁護士の内田剛弘氏だ。
「私は『愛のコリーダ』裁判ほか、多くのわいせつ裁判に関わってきましたが、もういい加減、わいせつを判断するのに裁判官の主観ひとつで白と黒を左右するような時代錯誤はやめるべきです。
女性器については当局はナーバスですが、こうした彫刻で摘発された事例は聞いたことがありません。この作品はイギリス本国でギャラリーに展示されていたことからも芸術作品であることは明らか。これをわいせつとしては、日本が恥をかきますよ」
※週刊ポスト2012年8月17・24日号