国際情報

米大手製薬会社 新薬のアイデアもクラウドソーシングの時代

 日本企業は「選択と集中」を標榜しながら、会社の組織の「選択と集中」には取り組まず、商品の「選択と集中」だけを行なうという間違った経営戦略をとっていると大前研一氏は指摘する。そんな氏が、経営戦略の中心テーマが会社機能の「選択と集中」に移っている欧米のアウトソーシング事情について解説する。

 * * *
 欧米企業では商品の「選択と集中」は当たり前となり、経営戦略の中心テーマは会社の機能の「選択と集中」に移っている。

 キーワードは「CXM(シー・エックス・エム)」だ。「C」はコントラクト(Contract=契約)、「M」はマネージメント(Management=管理)で、真ん中の「X」には「M(Manufacturing=製造)」「S(Sales=販売)」「R(Research and Development=研究開発)」など様々な言葉が入る。「CMM」なら製造管理契約、「CSM」なら販売管理契約、「CRM」なら研究開発管理契約という意味である。

 つまり、日本企業のように研究開発・設計・製造・販売・サービス・営業などの機能別組織をすべて自前で持つのではなく、他社に任せたほうがコストが下がる機能は丸ごと「外注」する。あるいは、自社に強力な機能がある場合は他社からCXMを請け負う。そうした会社の機能の「選択と集中」が、ビジネス新大陸の新潮流になっているのだ。

 とりわけ製薬業界では、CRM(CRO=Contract Research Organizationという呼称も)が先行している。新薬の研究開発や臨床試験や各国での承認申請など、気の遠くなるような時間と経費がかかるプロセスを外注することでコスト削減とスピードアップを図っている。

 アメリカの製薬大手イーライリリーなどは、新薬のアイデアそのものも、クラウドソーシング(インターネットで不特定多数の人に業務を委託する雇用形態)によって世界中の研究者から募集している。

 それに加えて、クラウドコンピューティング(インターネット上にあるサーバーを利用して作業を行なうサービス形態)の発達により、今や回線1本で世界中の企業や人材と繋がって業務をアウトソーシングできるようになった。

 欧米ではBPO(Business Process Outsourcing/企業が自社の業務処理を外部の業者に委託すること)が一般的になり、基幹でない業務は、できるだけ自社で抱えない形態にシフトしている。

※週刊ポスト2012年10月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン