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中学校の合唱部がテーマの小説 10万部突破も作者は歌が苦手

 2011年の発売以来、10万部突破のベストセラーとなっている『くちびるに歌を』(小学館刊)は中学校の合唱部がテーマだ。2012年11月には第61回小学館児童出版文化賞を受賞。同賞は、1年間に発表された絵本や童話、文学作品のなかから、子供たちに推薦したい最も優れた作品に贈られる。

<合唱部員たちの様子が変化していた。さっきまでばらばらにうごいて、はずかしそうにしていた部員たちが、ぴたりと静止し、背筋をのばして立っている。まるで別人にでもなったかのようだ>

<柏木先生が腕をふる。さざなみのように声がひろがった。それは声というよりも、あたたかい水のようだった。幾重もの声がかさなって、渾然一体となり、だれのものでもない歌声となる>

 作中に織り込まれたリアルな合唱シーンも高評価につながっているが、著者の中田永一さんは、意外なことにこう苦笑する。

「自分自身は歌うことが大の苦手。ずっと歌うことと縁のない人生を過ごしてきたんです。でも、歌っている人を見ているのは決して嫌いではなくて、歌う人のメンタリティーに興味がありました。スポーツ好きの人がアスリートのメンタリティーに興味を抱くのに近い感覚です。間違った内容を描いて経験者に怒られるのがいちばん怖かったんですが、今のところそれはありません(笑い)」

※女性セブン2012年12月27日・2013年1月1日号

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