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来日25年のアメリカ人が賞賛する日本人のATMでの気配り

 中韓の猛追、“失われた20年”で日本は自信を喪失している。だが、「日本人には素晴らしいところがたくさんある」。そうエールを送るのは、ベストセラー『日本人が世界に誇れる33のこと』(あさ出版刊)の著者のルース・ジャーマン・白石さんだ。

 * * *
 1987年に留学で来日し、その後は日本企業で働いてきました。仕事を通じて多くの外国ビジネスパーソンに会い、彼らから日本についての質問を受け、多くのことを学び、考えさせられてきました。そんな経験を持つ自分だからこそ、見えてくる日本人のオンリーワンがあると思っています。

 たとえばアメリカでは、ATMで操作に時間がかかっても、後ろに並んでいる人たちを全然気にしません。やりたいことを平気で最後まで済ませます。日本ではどうでしょう? 後ろの人たちを気遣い、4回操作するところを2回で止めてしまう人もいるのではないでしょうか。

 多くのアメリカ人には「行動は本人の選択である」という考えが徹底しています。ATMに並ぶというのは本人が決めたこと。イヤだったら止めればいい、となるのです。操作中の人が時間をかけすぎて、待っている人が約束の時間に遅れても、「待つ選択」をした本人が悪いという考えです。

 日本では後ろの人に「お待たせしました」と声をかける人をよく見かけます。そんな日本人の「気配り」が私は大好きです。外国でもそんなシーンが見られたら、よりフレンドリーな世界が広がると思います。

 次に日本人の「甘え」について考えてみます。アメリカ人は精神的に不安定な状態に陥った時、他人に頼らず自分で問題を解決しようとします。他人に頼る、甘える、という発想はほとんどありません。

 結果、ストレスがたまり、メンタルヘルスに問題が生じることにもなります。現在、定期的にカウンセリングに通っているアメリカ人は非常に多いのです。普段から相談したり、甘えたりする相手が周囲にいないことがその理由だと思います。

 一方、日本人はとても「甘え上手」「相談上手」です。職場でも「仕事は一人で抱え込まない方がいい」とか「困った時は先輩に頼ってもいい」といった雰囲気があります。

「甘える」という行為をネガティブに捉えている人がいるかも知れませんが、私は日本人特有の「頼る」「甘える」は、メンタル面の安定維持につながり、ビジネスにおいても大きなアドバンテージになっていると思います。この「支え合う人間関係」を大事にしてほしいのです。

 その一方で、日本人は「ほめられ下手」です。日本人に「日本のこんなところがいいですね」と話しても否定されてしまうのです。たとえばこんな具合です。

私:「日本は治安がいいですね」
相手:「でも、アメリカの方が住みやすくないですか」
私:「日本の男性は我慢強いですね」
相手:「でも、アメリカ人の男性の方がやさしそう」

 最初は日本人は日本のことが嫌いなのではないかと誤解していました。しかし次第にそれは謙遜であり、相手を持ち上げながら会話をスムーズに続けるための話術であることに気付きました。相手を敬い、よいところを見ようとする日本人の誠実な姿勢は、世界に誇れる長所の一つだと確信しています。

 ボランティア活動などでの日本人の志の高さにも驚かされました。でも日本人に日本人のよさをいくら話しても、なかなか理解してくれません。日本人はもっと自信を持って自分たちのよいところをアピールすべきだと思います。

※SAPIO2013年1月号

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